卵巣刺激高反応者(PCOS以外)にはfixed GnRH antagonist法はどう?(論文紹介)
GnRH antagonist(アンタゴニスト)法は、fixed法とflexible法が存在します。fixed法はホルモン評価や超音波モニターの回数を含めた通院回数が少なく、flexible法は薬の量や治療期間を少なくできるメリットがそれぞれあります。
PCOSを伴わない卵巣刺激高反応者にはfixed GnRH antagonist法がflexible法と比べて生殖医療成績・合併症がどうかを比較したRCTをご紹介いたします。
≪ポイント≫
PCOSを除く卵巣刺激高反応者には、開始用量150IU rFSHを用いたfixed GnRH antagonist法は有効性に優れ、患者にやさしい治療法と考えられます。
≪論文紹介≫
Xiu Luo, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2021. DOI: 10.1186/s12884-021-03833-2
2016年1月から2017年7月まで体外受精を受ける、PCOSを伴わない卵巣刺激高反応者と予測される女性201名(35歳未満、BMI 18~25、月経周期 21~35日であり、1)前採卵数が15個以上、2)AMH≧3.52ng/ml、3)AFC 16以上、の少なくとも一つに合致する)を対象とした無作為化比較試験です。
rFSH 150IU 4日間固定投与し、その後に介入を行いました。Fixed法では5日目からHCG投与日まで、flexible法では発育卵胞径12mmに達した日(エストラジオールレベル>600 pg/ml、LH>10 IU/Lなども含む)からHCG投与日までGnRH antagonistを連日投与し、少なくとも3つの発育卵胞径17mm以上になった日に250μg rhCGにてトリガーを実施しました。発育卵胞径11mm以上の卵胞が19個以上あった場合は0.2mg GnRH agonistにてトリガー実施しました。
主要評価項目は回収卵子数であり、副次評価項目は、rFSHとGnRH antagonist投与期間と総量、早期LHサージ(LH>10 IU/L、プロゲステロン>1 ng/ml)および重症OHSS発生率、着床率、臨床妊娠率、継続妊娠率および累積生児出生率でした。追跡期間はすべて3年としました。
結果:
採卵回収卵数(16.72 ± 7.25個 vs. 17.47 ± 5.88個, P = 0.421)、ゴナドトロピン治療期間(9.53 ± 1.07日 vs. 9.67 ± 1.03日, P = 0.346 )、総ゴナドトロピン量( 1427.75 ± 210.6 IU vs. 1455.94 ± 243.44 IU, P = 0.381 )に関してfixed法とflexible法では差がありませんでした。GnRH antagonistはfixed法が長くなりました(6.57 ± 1.17日 vs. 6.04 ± 1.03日,P = 0.001)。いずれのプロトコールにおいても,早発性LHサージは認められませんでした。
≪私見≫
4つのRCTとメタアナリシスにおいて、fixed法とflexible法は、採卵回収卵数および臨床妊娠率において、正常卵巣予備能女性では同等であることがわかっています(4つのRCT;Escudero E, et al. Fertil Steril. 2004. Kolibianakis EM, et al. Fertil Steril. 2003. Ludwig M, et al. 2002. Mochtar MH, et al. Hum Reprod. 2004、メタアナリシス;Al-Inany H, et al. Reprod BioMed Online. 2005)
体外受精の保険適用においては、fixedは有用な方法であると考えています。
PCOS女性を対象とした唯一のRCTでは、フレキシブル群での総採卵数および良質胚数が固定群よりも顕著に多いという多様な結果が得られています[8]。
文責:川井清考(院長)
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