体外受精のhCG/GnRHaトリガーは採卵日のプロゲステロンに影響する?(論文紹介)

体外受精の排卵誘発のトリガーを考える際、新鮮胚移植をイメージしとき、以前に比べて内膜のずれを意識するようになりました。その結果、プロゲステロンがどのように動いていくのか、把握しておくことが新鮮胚移植か全胚凍結かを把握するうえで大事なポイントになります。
先日、ご紹介したブログ、FSHアンタゴニスト法のhCGトリガー直後のプロゲステロン値もその中の一つです。
体外受精のhCG/GnRHaトリガーは採卵日のプロゲステロンに影響するかを調べた報告をご紹介します。

≪論文紹介≫

N Friis Wang, et al. Human Reproduction. 2019. DOI: 10.1093/humrep/dez023

2009 年から 2011 年に実施された既報の RCT のデータ(Humaidan P, et al. Hum Reprod 2013;28:2511–2521)に基づいて二次解析された報告です。Fixed アンタゴニストプロトコールで卵巣刺激を行った384名(199名:5000IU uhCGトリガー、185名:ブセレリン0.5mgトリガー)に対して排卵誘発日と卵子採取日のP4(プロゲステロン値)を測定しました。
結果:
排卵誘発日と採卵日のP4の間には、GnRHaトリガー群と同様に、hCGトリガー群でも(P < 0.00001)有意な線形関係を認めました(P < 0.00001 )。P4 比(排卵誘発と採卵の間のP4の増加)は、5〜15個および15個以上の回収卵子数があった患者群と比較して、5個未満の回収卵子数であった患者群で有意に高くなりました(P < 0.0001)。卵胞あたりのFSH使用量は、5〜15個および15個以上の卵胞を持つ患者群と比較して、5個未満の卵胞を持つ患者群で有意に高くなりました(P < 0.0001)。

≪私見≫

HCGトリガーはGnRHaトリガーよりも急なP4上昇を誘発します。どうしても排卵トリガー日のP4の上昇を見ると、GnRHaトリガーによって期待するLHサージを抑制されたらどうしよう?という不安がよぎることがあります。
ただ、この報告では排卵前P4レベルは、採卵対象の発育した卵胞の顆粒膜細胞のLH感受性を反映していると考えられ、hCGまたはGnRHaトリガーにさらされると、トリガー前P4に比例する形でP4が上昇することがわかりました。
今回の対象は女性年齢30-31歳、BMI 24前後 total FSH 1800単位 刺激日数 9.5日前後のFixed アンタゴニストプロトコールで回収卵9個くらいを取った場合のホルモン変動です。

  GnRHaトリガー 179名 hCGトリガー 191名
トリガー日P4値 0.91±0.038 ng/mL 0.94±0.035 ng/mL
採卵日P4値 7.20±0.629 ng/mL 9.94±0.472 ng/mL

この論文のP4(プロゲステロン)値の単位はnmol/Lとなっています。P4の単位換算は1 ng/mL  = 3.18 nmol/Lです。

文責:川井清考(院長)

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