FSHアンタゴニスト法のhCGトリガー直後のプロゲステロン値(論文紹介)

hCGトリガー後の超初期黄体ホルモンの動きを調べた論文は、意外と多くありません。新鮮胚移植を実施する際に移植成績が低下するのは、早期にプロゲステロンが上昇することにより内膜受容能と胚発育スピードにずれが生じるためを考えられています。通常排卵したらP4 値が1 ng/mlをこえるくらいの印象ですが、実際はどのように変化するのでしょうか。

≪論文紹介≫

Carol Coughlan, et al. J Assist Reprod Genet. 2022. DOI: 10.1007/s10815-022-02474-4
2021年2月から2021年5月までUAEの生殖医療施設においてFSHアンタゴニスト法で治療を行う患者11名にhCGトリガー日の朝(10時〜12時)、hCGトリガー直前、hCGトリガー後1時間、2時間、36時間に血液サンプルを採取しました。リコンビナントFSHを用いたfixedアンタゴニスト法で、3個以上の卵胞が17mmに達した時点で、5000IUのuhCGを皮下投与しています。患者背景として平均33.3歳、BMI 23.8、AMH3.1 ng/ml、卵巣刺激期間は9.7日 total FSH量 2392.1単位、回収卵子 11.5個、成熟卵子数 10.2個の場合となっています。
結果:
hCGトリガー後、トリガー後1時間(P4 0.57 ng/ml, p < 0.05)、トリガー後2時間(P4 0.88 ng/ml, p < 0.001) 採卵日(P4 9.68 ng/ml, p < 0.001 )と早くから血清プロゲステロン値の上昇が確認されました。ゴンペルツ曲線によれば、トリガー後4時間の血清プロゲステロン値の予測値は1.45ng/ml、トリガー後8時間は3.04ng/ml、トリガー後12時間は4.8ng/mlと考えられました。

≪私見≫

患者様というより、医療者が学ぶことが多い論文ですね。
FSHアンタゴニスト法hCGトリガーではLHはほぼ不変、FSHは、採卵日は軽度低下するがほぼ不変、E2は採卵日は低下、そのほかのhCGトリガー日の朝(10時〜12時)、hCGトリガー直前、hCGトリガー後1時間、2時間は不変であることが印象的でした。

プロゲステロンが比較的早期から上昇することを考えると、回収卵10個程度の新鮮胚移植を行う場合、ERAのずれで考えるとearly receptiveからPre-receptiveで戻すようなイメージなんだなーと感じました。

同じような論文が、最近2本くらい出ているようです。また読んでみたいと思います。(Friis Wang N, et al. Hum Reprod Oxf Engl. 2019;34:942–8. Vuong LN, et al. Hum Reprod Oxf Engl. 2020;35:157–66. この2本は同じグループ)

文責:川井清考(院長)

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