激しい運動、サウナや温泉で妊娠中、女性は体温を上げちゃだめなの?(論文紹介)

妊娠中の高体温が胎児奇形や妊娠合併症を引き起こす可能性は動物実験でも証明されており、ヒトでは深部体温が39.0℃(またはベースラインから1.5℃~2.0℃上昇)を超えると、胎児の催奇形性のリスクが高まるとされています。
米国産科婦人科学会、英国産婦人科学会、オーストラリア・ニュージーランド産科婦人科学会のガイドラインでは、「熱ストレスから守るために、高温多湿を避けること」を推奨し妊娠中の長時間の入浴やサウナ使用を控えるようにとしていますが、現在のガイドラインでは避けるべき熱ストレスの基準を明確に定義していません。
サウナや温泉・激しい運動で母体の深部体温の変化をみた論文をEMBASE、MEDLINE、SCOPUS、CINAHL、Web of Scienceのデータベースを用いて2017年7月12日まで検索したシステマティックレビューをご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Nicholas Ravanelli, et al. Br J Sports Med. 2019. DOI: 10.1136/bjsports-2017-097914
12件の研究(陸上での運動:7本、水中での運動:3本、湯船・サウナ:2本)が対象基準を満たしました(n=347)。深部体温が39.0℃を超えた女性はいませんでした。平均深部体温は、陸上での運動 38.3℃(95%CI 37.7℃~38.9℃)、水中での運動 37.5℃(95%CI 37.3℃~37.7℃)、湯船につかること 36.9℃(95%CI 36.8℃~37.0℃)、サウナ 37.6℃(95%CI 37.5℃~37.7℃)でした。
妊娠中の女性が安全に実施することができるのは①25℃、湿度45%での最大心拍数の80~90%での35分までの運動、②水中での運動(33.4℃以下)で45分までの運動、③湯船につかること(40℃)または高温乾式サウナ(70℃、湿度15%)で20分まで座位でした。

妊娠週数が進むにつれて運動や熱への曝露による深部体温の変化が小さくなることがわかっており、生理的なコントロールが働いているよりは妊婦の体格や体表面積の変化により体温調節能力が向上します。このことから考えると妊娠中は初期が一番、女性の深部体温が変化する可能性が高いことがわかります。

≪私見≫

妊娠中に深部体温があがりそうな行動は少し控えましょう。あとは自己責任でしょうか。

~関連ブログ~
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男性不妊への影響:ライフスタイル(サウナ)

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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