月経以外の性器出血は妊娠に影響する?(論文紹介)

「月経中以外の性器出血があって不安です」という訴えをよく患者様から伺います。月経以外の性器出血には様々な理由が考えられます。着床出血・妊娠に伴う出血、無排卵の破綻出血、子宮内腔の変形・炎症・腫瘍による出血、ホルモンバランスの乱れ(排卵時出血、黄体期出血)、感染などです。
月経周期以外の性器出血はどれくらいの頻度であるのか、いつに起こりやすいのか、妊娠への影響するのかと調べた前向き研究がありましたのでご紹介させていただきます。

≪論文紹介≫

Natalie M Crawford, et al. Fertil Steril. 2016. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2016.01.015
月経以外の性器出血が妊娠に与える影響を評価しました。
2008年4月から2015年4月の間に不妊症ではない30~44歳の妊娠を希望する女性(妊娠を試みる3ヶ月以内、月経周期 21〜35日)を対象に行った前向きコホート研究です。性器出血があった周期、その後の妊娠率を検討しました。
結果:
549人の女性から1,552周期分のデータが提供されました。研究登録した女性の61%が妊娠し第1周期における妊娠率は18%でした。月経以外の性器出血と黄体期の性器出血は、それぞれ36%と34%でした。月経以外の性器出血のうち93%が黄体期の性器出血でした。月経周期以外に性器出血があった女性は次の周期も51%の女性で同じように出血を認めました。
月経以外の性器出血と黄体期の性器出血があった周期では,妊娠率が低下しました(fecundability ratio(FR)=0.23,95%CI:0.16-0.34、FR=0.22,95%CI:0.14-0.33)。月経以外の性器出血と黄体期の性器出血の経験がある女性は、その後の周期では妊娠率が有意に上昇していました(FR=1.61、95%CI:1.15-2.25、FR=2.01、95%CI:1.52-2.87)。
結論:
月経以外の性器出血は、その周期に妊娠する確率を低下させます。しかし、その後の妊娠能力に悪影響を与えるものではなさそうです。

≪私見≫

月経以外の性器出血は5%から13%とされています。今回の月経以外の性器出血の割合が高かったのは点状出血もカウントするように指示したことが起因するのではないかとされています。
月経以外の性器出血は、その周期の妊娠率の低下につながります。子宮内膜ポリープや子宮筋腫などの構造的な異常がないかどうか、子宮内膜に炎症をおこすような疾患が隠れていないか、ホルモンバランスの異常がないかどうかをチェックするようにしてもよいかもしれません。

また月経周期に軽度の乱れが伴う月経以外の性器出血に遭遇した場合は生化学妊娠を起こしていないかのチェックをする

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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