PGTのための生検による周産期予後(Am J Obstet Gynecol. 2024)

PGT検査のためのtrophectoderm生検が周産期予後に与える影響は相反する結果となっています。

  • 胎盤異常・妊娠高血圧症候群、子癇前症、SGA児、早産などの周産期予後リスク上昇
     M. Li, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021. doi: 10.1016/j.ajog.2020.10.043
     R. Makhijani, et al. Hum Reprod. 2021. doi: 10.1093/humrep/deaa316
     W.Y. Zhang, et al. Fertil Steril. 2019. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.033
  • 周産期予後リスク上昇関連なし
     C.K. Sites, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021. doi: 10.1016/j.ajog.2021.04.235
     Y. Hao, et al. Reprod Biomed Online. 2022. doi: 10.1016/j.rbmo.2021.07.016
     M. Cozzolino, et al. Hum Reprod. 2023. doi: 10.1093/humrep/dead123

今回、SARTレジストリを用いた在胎週数、出生体重にフォーカスをあてた研究がでてきましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

PGT検査のためのtrophectoderm生検を実施しガラス化凍結胚盤胞移植後の単胎児出生症例において、SGA児、LGA児、37週未満早産との関連性は認められませんでした。trophectoderm生検群では、34週未満の早産リスクを低減させることで、低出生体重児出産のリスクを低減させる結果となりました。

≪論文紹介≫

Angela Hui-Chia Liu, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Dec;231(6):636.e1-636.e9. doi: 10.1016/j.ajog.2024.07.007.

PGT検査のためのtrophectoderm生検を伴うガラス化融解胚盤胞移植後の出生体重と早産における周産期予後を調査することを目的としました。2014年から2017年にSARTレジストリに報告されたtrophectoderm生検の有無がわかっているドナーを除く凍結融解胚盤胞移植周期による単胎児生存出産45712名のレトロスペクティブ観察コホート研究です。trophectoderm生検群(21,584名)とtrophectoderm生検なし群(24,128名)を比較し、SGA児、LGA児 、低出生体重児(2,500g未満)、超低出生体重児(1,500g未満)、極低出生体重児(1,000g未満)、37週未満早産、34週未満早産、28週未満早産について、調整オッズ比を算出しました。
結果:
trophectoderm生検群の女性年齢が高く、以前に妊娠、出産、自然流産既往が多くなりました。trophectoderm生検群では、喫煙、卵巣予備能低下、不育症率も高くなりました。trophectoderm生検群は、SGA児(aOR、0.97;95%CI、0.85-1.12;P=0.72)やLGA児(aOR、1.10;95%CI、0.99-1.22;P=0.09)とは関連しませんでした。妊娠37週未満早産リスクは、生検群と生検なし群で同程度でした(aOR、0.93;95%CI、0.85-1.02;P=.11)。trophectoderm生検群は、出生時体重2,500g未満(aOR、0.80、95%CI0.70-0.92、P<0.001)、出生時体重1,500g未満(aOR、0.62、 95%CI、0.46-0.83;P<.001)、超低出生体重児(1,000g未満)(aOR、0.48;95%CI、0.31-0.74;P<.001)、34週未満の中等度早産(aOR、0.76;95%CI、0.64-0.91;P=0.003)、および極小未熟児(28週未満)(aOR、0.63;95%CI、0.43-0.92;P=0.02)となりました。

≪私見≫

trophectoderm生検群では、限局性胎盤モザイクを伴った出産症例が少ないせいではないか?と推察していますが、本当のメカニズムはわかっていません。ただ、trophectoderm生検が出生体重、早産を増やすことはなさそうですね。Trophectodermがスタートに少ない分には、どこかのタイミングで補完されるのでしょうね。今後の報告も注視していきたいと思います。

PGT-A(着床前検査)ASRM committee opinion 2024

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文責:川井清考(院長)

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