AI 5日 vs. 7日投与の卵巣刺激結果(Hum Reprod Open. 2024)

海外ではPCOS排卵障害女性の卵巣刺激第一選択薬はレトロゾール(AI)となっています。AI の通常投与に抵抗性を示す患者は15%程度いるとされていて、以前より延長投与などの有効性が話題に挙がっていました。
今回AI 5日間投与と7日間投与での排卵率やタイミング妊娠率などを調査した報告がでてきましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

AI 5mg/日を5日間から7日間に伸ばしても排卵率は変わりませんでした。

≪論文紹介≫

Xiuxian Zhu, et al. Hum Reprod Open. 2024 Jul 18;2024(3):hoae046. doi: 10.1093/hropen/hoae046.

PCOS女性において、レトロゾール(AI)を5日間より7日間と延長して内服すると、より高い排卵率を示すかどうか調査したランダム化比較試験です。
2021年1月~2022年10月に AIによる初回卵巣刺激を受けた 148 名の PCOS 女性を対象としました。7日間投与群と5日間投与群に無作為に割り付けました。主要評価項目は排卵率、副次評価項目は臨床的妊娠率、排卵前発育卵胞数、多胎妊娠率としました。
結果:
7日間投与群の排卵率は5日間投与群の排卵率よりわずかに高くなりましたが、その差はintention-to-treat解析(90.54%[67/74] vs. 79.73%[59/74]、P= 0.065;RR[95%CI]: 0.881[0.768-1.009])またはper-protocol解析(90.54%[67/74] vs. 84.29%[59/70]、P= 0.257;RR[95%CI]:0.931[0.821-1.055])ともに差を認めませんでした。排卵前発育卵胞数は両群でほぼ同じであり(1.39±0.62 vs. 1.37±0.59、P= 0.956)、卵巣過剰刺激症候群の症例は認めませんでした。平均子宮内膜厚は、統計学的な差はないものの5日間投与群が7日間投与群より厚くなりました(9.27±1.72mm vs. 9.57±2.28mm、P=0.792)。per-protocol解析では、臨床的妊娠率(20.27%[15/74] vs. 14.29%[10/70]、P= 0.343;RR[95%CI]: 0.705[0.34-1.463])および生児出生率(13.51%[10/74] vs 11.43%[8/70]、P= 0.705;RR[95%CI]:0.846 [0.354-2.019])は治療群間で有意差は認めませんでした。妊娠は全症例、先天障害を認めませんでした。

≪私見≫

この論文 ホルモン動態などもグラフ化されていますので、とても参考になります。

ゴナドトロピン、クロミフェン、レトロゾールを用いた一般不妊治療の出生から3歳までの年1回の縦断的追跡調査(PPOSII試験 + AMIGOS試験で出生した子供)では、レトロゾールで妊娠・出生した子供の成長率・認知発達率がむしろ悪くなく、胎児へのマイナス影響はほぼ否定されたと考えて良いかもしれません。
Richard S Legro, et al. Fertil Steril. 2020 May;113(5):1005-1013. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.12.023.

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文責:川井清考(院長)

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