男性不妊治療について

男性不妊治療について産婦人科診療ガイドライン外来編2020に取り上げられています。(添付CQ320参照)
この中で特に皆さんに知っておいていただきたいことは以下の通りです。
①男性側の検査は一度で判断するのではなく、3ヶ月以内に2回精液検査を行って診断をします。
②精液所見が不良の方の60%が原因不明です。薬物治療をされることが多いですが、根拠が乏しい薬剤が数多く使われるのが現状ですので、泌尿器科医による治療が適切とされています。
③人工授精の適応となるのは、軽度の乏精子症、精子無力症であり、重度の場合は体外受精・顕微授精が必要となります。
勃起不全の患者は、我が国には1000万人以上いることが推定されており、患者と相談のうえ、泌尿器科受診、ステップアップをふまえて治療を検討して参ります。

不妊治療において、女性原因を産婦人科医師、男性原因を泌尿器科専門医師が診ることが今でこそ当たり前になってきましたが、不妊症は男性側に言及されず産婦人科だけで治療をされていた時代がありました。私も不妊治療を学び始めた当時、男性不妊診療を勉強したいと思い男性不妊を学べる施設で診察をしていた時期もあります。(現在は「餅は餅屋」だと思い泌尿器科医師に委ねておりますが、治療をする上での選択の幅は深まったと思っています。)
2020年現在、今もなお男性側の不妊症の原因は、女性側よりもわかっていないことが数多くありますが、ここ数年、以前に比べると数多くわかるようになってきましたので、古いウェブ情報などを参考にして独自に対策を練るよりは、精液検査の結果に異常があった場合は男性不妊外来を受診していただくことをお勧めいたします。
当院では千葉大学泌尿器科と連携し、毎週土曜日に小宮顕先生が男性不妊外来を担当しております。当院のデータをふまえて原因や成績、また診察や検査の内容もホームページにアップしましたので、是非参考になさってください。https://medical.kameda.com/ivf/patient/lp/002/index.html
また土曜日は当院にも男性の患者様も数多くおいでになりますのでブログは積極的に男性側の記事を出すようにいたします。
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CQ320 男性不妊治療は?

  1. 男性不妊症の原因検索は泌尿器科医と連携して行うことがすすめられる。(推奨度B)
  2. 乏精子症には薬物療法をおこなう。(推奨度C)
  3. 軽度の乏精子症、精子無力症に対しては配偶者間人工授精を行う。(推奨度B)
  4. 重度の乏精子症、精子無力症に対しては体外受精・顕微受精を行う。(推奨度B)
  5. 無精子症・重度の乏精子症の原因検索および治療に際しては、男性不妊を専門とする泌尿器科医と相談し、治療方針を決定する。(推奨度B)
  6. 無精子症などの夫の精子による妊娠が困難と考えられる場合に提供精子をもちいた人工授精を選択することができる。(推奨度C)
  7. 勃起・射精障害などの性機能障害に対しては、泌尿器科医と連携して治療をおこなう。(推奨度C)

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。