媒精と顕微授精の違い(メリット・デメリット)

今回は「媒精」と「顕微授精」の違い、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

精子侵入工程

精子侵入工程までの工程数をざっと比較すると「媒精」は1工程、「顕微授精」は5工程掛かることから、「媒精」の方は自然に近く非侵襲的ですが、「顕微授精」は卵子に穴を開けて精子を入れなければならないことから人工的で侵襲的です。

受精率

「媒精」は73%、「顕微授精」は84%です。「顕微授精」の方が「媒精」よりも高いです。

精子数

「媒精」をするためにはある程度の精子数が必要ですが、「顕微授精」は精子の数が少なくても大丈夫です。そもそも「顕微授精」は精子数が少ない患者さんのための技術です。

卵子が壊れる可能性

「顕微授精」では機械的に卵子に小さな穴を開けて精子を注入するので、2%の卵子は壊れてしまいます。これに対し「媒精」では精子を卵子に振りかけるだけなので、基本的に卵子が壊れることはありません(0%)。

受精しない可能性

残念ながら「媒精」「顕微授精」どちらも受精しない可能性はあります。

追加コスト

「顕微授精」は追加のコストが必要です。大雑把に+5万円ですが、数が多くなる程、更に追加料金が必要です。

それぞれのメリット・デメリット

極簡単にまとめますと、「顕微授精」は「媒精」に比べて人工的でコストが掛かる分、受精率は約1割高いといったところでしょうか。しかし、「媒精」の方が受精方法として劣っているわけではありません。「顕微授精」では、成熟している卵子にしか精子を入れません。「媒精」では未熟な卵子にも精子を振りかけることがありますので(未熟な卵子は精子を振りかけても、顕微授精をしても受精しません)、「媒精」では未熟な卵子が含まれる分、受精率が低く見えることもあります。

 

患者さんの中には、「顕微授精」が「媒精」に比べて人工的であるため、生まれて来る赤ちゃんに悪影響が出るのでは?と心配される方が多くいらっしゃいます。しかし、当クリニックで「媒精」と「顕微授精」から生まれてきた赤ちゃんの先天異常率を比較した結果、差は見られませんでした。詳細は過去のブログ記事を御参照ください(https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_127.html)。受精方法に「顕微授精」を選択された方々は必要以上に不安にならないで頂ければと思います。

 

文責:平岡(培養室長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。