非閉塞性無精子症はどうやって治療されている?(その1)

≪研究の紹介≫ 

非閉塞性無精子症の内科的および外科的マネジメントにおける世界的な診療とパターンとばらつき: 世界的な調査結果、ガイドラインおよび専門家の勧告

Global Practice Patterns and Variations in the Medical and Surgical Management of Non-Obstructive Azoospermia: Results of a World-Wide Survey, Guidelines and Expert Recommendations.

Rambhatla A, 他. World J Mens Health. 2024 Apr 4. doi: 10.5534/wjmh.230339. Epub ahead of print. PMID: 38606867.

今回は、非閉塞性無精子症はどうやって診断されている?(2024年8月31日)の続きで、診断後のマネジメント(治療)についてです。診断よりも専門家の間でばらつきがあります。
要旨をご紹介し、具体的な内容で面白そうな項目については次回ご紹介したいと思います。

≪要旨≫ 

非閉塞性無精子症(NOA)は、まれな疾患ではないものの複雑な問題で、治療法も多岐にわたり、明確なガイドラインもありません。それため、NOAのマネジメントについてはかなりの議論があり、ばらつきが大きくなっています。この研究では、NOA患者の内科的および外科的なマネジメントに関する現在の世界的な動向を評価する目的で行われました。

NOAの評価とマネジメントの様々な点をカバーした56問からなるオンラインの調査票が世界中の専門家に送付されました。この研究は、NOAの管理に関する調査の後半部分の結果を分析したものです。この結果を現在のガイドラインと比較し、デルファイ法を用いて専門家が推奨する提言が作成されました。

49カ国の参加者から336件の有効な回答がえられました。性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)が正常値の性腺機能低下症、および性腺刺激ホルモン高値の腺機能低下症症例に対して、それぞれ29.6%、23.6%の参加者が、外科的精子採取(SSR)の前に3~6ヶ月間のホルモン療法を行うことを提案していました。参加者の50.0%が、SSR率が26.0%から50.0%と報告していした。クラインフェルター症候群について、参加者の46.0%がSSR は10%未満と報告し、41.3%が着床前遺伝学的検査を日常的に推奨していました。また、SSRの前の精索静脈瘤手術は参加者の57.7%が推奨していました。回答者の5.4%が、SSR率向上のために精巣の最も血管の多い部位を特定する目的で超音波を使用していると回答しました。3分の1は、NOAのすべての症例で直接顕微鏡下精巣内精子採取術(mTESE)に進む一方、3分の2は段階的なアプローチをとっているとしました。conventional TESEで精子が採取できなかった場合、参加者の23.8%は3ヶ月待ち、33.1%は6ヶ月待ってからmTESEに進んでいます。SSR陽性かどうかの判断のための卵胞刺激ホルモンのカットオフは、参加者の22.5%が12~19 IU/mL、27.8%が20~40 IU/mLと報告し、31.8%が上限なしとしました。

この研究は、生殖医療の専門家によるNOAの実際の内科的・外科的管理に関するこれまでで最大の調査となっています。さまざまな診療パターンがあることが明らかになっており、エビデンスに基づき、かつ国際的なコンセンサスを持ったガイドラインが必要です。

≪筆者の意見≫ 

質問項目それぞれについて、大半の専門家の意見が一致するような項目はほぼない感じです。やはり、精子採取予測が困難で、精子採取率が基本的に高くないので、各医療家がいろいろな工夫をしていることが伺えます。マイクロTESEにダイレクトに進むのは比較的少数派で、TESAやcTESEを行ってからマイクロTESEw行う場合が少なくないのはとても興味深いです。
次回は質問の解答結果について、筆者が特に興味をもって参考にしたいと思ったものについて少しご紹介したいと思います。

文責:小宮顕(泌尿器科部長) 

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