非閉塞性無精子症はどうやって診断されている?

≪研究の紹介≫

非閉塞性無精子症の世界的な評価方法について: 世界的な調査の結果と専門家の提言

Global Practice Patterns in the Evaluation of Non-Obstructive Azoospermia: Results of a World-Wide Survey and Expert Recommendations

Shah R, ほか. World J Mens Health. 2024 Apr 3. doi: 10.5534/wjmh.230333. PMID: 38606865.

非閉塞性無精子症を的確に診断することはその後の治療方針や、成績の予測をする際にとても重要です。今回の研究は、日本からの5名を含む世界中の男性生殖医療のエキスパートから情報を収集して、どのように非閉塞性無精子症を診断しているのかをまとめたものです。

≪要旨≫

非閉塞性無精子症(NOA)の原因はさまざまで、精路の閉塞を伴なわず、持続的に精液中に精子が存在しない状態です。この研究は、NOA診断における世界的な診療のパターンを調査し、ガイドラインとの比較を行って、専門家から推奨できる情報を提示することを目的として行われました。

NOAの診断とマネジメントに関する56項目の質問からなるアンケート調査が、2022年7月から9月にかけて全世界に向けて実施されました。この論文ではその結果の前半部分として、NOA診断の評価方補に焦点を当てています。49ヵ国、367人の参加者からデータが収集され分析されました。

対象となった336名からの回答のうち、大半の参加者は経験豊富な専門家でした(70.93%)。無精子症を確定診断するために、回答者の81.7%が2回の精液採取を行っています。ホルモン検査では、卵胞刺激ホルモン(FSH)(97.0%)、総テストステロン(92.9%)、および黄体形成ホルモン(86.9%)が実施されています。NOA症例対する遺伝学的検査は回答者の66.6%が実施し、多く行われているのは核型分析(86.2%)とY染色体微小欠失(88.3%)でした。閉塞性無精子症(OA)とNOAを鑑別する診断目的の精巣生検は、45.1%が実施していませんが、34.6%では選択的に実施していました。OAとNOAの鑑別に有用な所見は、身体診察(76.1%)、血清ホルモン値のプロファイル(69.6%)、精液検査(68.1%)から得られると回答されました。外科的精子採取術で精子が見つかる確率が高くなると予想できる所見としては、FSHが正常(66.4%)、精巣体積が正常(63.1%)、射精液に精子を認めたことがある(60.4%)などが挙げられていました。

結論として49カ国から367人が参加したこの専門家への調査では、ガイドラインで推奨されているものと一致した方法でNOAの診断が行われていることがわかりました。しかし、診断方法にはばらつきがあり、NOAの評価を標準化することが必要です。この専門家の間にあるギャップに対処するためには、エビデンスに基づく国際的なコンセンサスやガイドラインを構築することが必要であると考えられます。

≪筆者の意見≫

この研究は、生殖医療の専門家が日常的に行っているNOA診断の方法を世界中にアンケートを行ってまとめたものです。私が行っていることも大体一致していて安心しました。診断に用いることができるツールが限られており、ある程度のコンセンサスが得られているということがわかりました。一方で、すべての専門家が同じことをやっているわけでもないことが明らかになったと思います。OAとNOAの鑑別のために精巣生検を行っている医療家が以外と多い印象です。ASRMやEAUのガイドラインでは現時点では推奨されていませんが、精巣組織の所見は精子採取の予測ツールとしては良いものであることも確かです。最近では、NOA症例に対して精巣組織所見のマッピングを行っている施設もありますので、今後のエビデンスの蓄積が待たれます。

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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