着床時ホルモンでPEは予測困難(J Assist Reprod Genet. 2024)

着床時期のプロゲステロン(P4)、エストラジオール(E2)、hCGで妊娠高血圧症候群を予測できるのでは?という研究は様々実施されていますが、結論はでていません。
今回の着床時期のホルモン動態で検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

着床時プロゲステロン、エストラジオール、hCGでの妊娠高血圧症候群判断は難しい。

≪論文紹介≫

Rachel A Martel, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Jul 25. doi: 10.1007/s10815-024-03212-8.

着床時期のプロゲステロン、エストラジオール、hCGで妊娠高血圧症候群を予測できるかどうかを調査したレトロスペクティブ研究です。主要評価項目は、妊娠高血圧症候群発症とし、副次評価項目は子宮内胎児発育遅延(IUGR)、妊娠糖尿病、出生時体重、早産発症としました。
結果:
681名の患者が対象となり、189名が凍結融解胚移植、193名が卵巣刺激、299名が自然妊娠でした。多変量解析ではP4、E2、hCGは妊娠高血圧症候群の発症と関連していませんでしたが、P4上昇はIUGRの発症と相関していました。

≪私見≫

この報告は自身が、そのうち読み直すだろうなとして取り上げました。
着床時の絨毛浸潤は胎盤疾患と関連があるのは間違いないと感じています。ただ、過去の着床時ホルモンと妊娠高血圧症候群との関連に対しては議論が分かれていて一定方向に収束する気配はないので、私の中では予測因子になりえないんだろうなと思っています。

hCGが高いとPE発症リスク高い
 Aulitzky A, et al. Reprod Biomed Online. 2023;46(1):196–202.
hCGが低いとPE発症リスク高い
  Åsvold BO, et al. Hum Reprod. 2014;29(6):1153–60.
エストラジオール値が低いとPE発症リスク高い
 Berkane N, et al. Endocrine Rev. 2017;38(2):123–144.
採卵決定時エストラジオール値が高いとPE発症リスク高い
  Imudia AN, et al. Fertil Steril. 2012;97(6):1374–9.
 Farhi J, et al. Reprod Biomed Online. 2010;21(3):331–7.

発症率が低い妊娠高血圧症候群を小さい症例数で論文にして日本からは通りにくいJARGに掲載されてしまうのはなんだか悲しい気持ちになりますね。

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文責:川井清考(院長)

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