胎盤(絨毛)遺残に対するhCG測定(J Minim Invasive Gynecol. 2022)
胎盤(絨毛)遺残に対してホルモン値(hCG)を測定するかどうかは一定の評価はありません。通常の経過であれば測定する必要はありませんが、遺残があり手術を介入する場合hCG測定することが慣習的に行われています。
今回の報告は少し着目点が違い、血清HCG測定が胎盤(絨毛)遺残の診断における判断材料になるかという報告です。
≪ポイント≫
血清βHCG値が陰性化しても胎盤(絨毛)遺残が残っていることがあります。
血清βHCG値測定は病勢の推移変化目的のみ活用可能そうです。
≪論文紹介≫
Noam Smorgick, et al. J Minim Invasive Gynecol. 2022 Mar;29(3):424-428. doi: 10.1016/j.jmig.2021.11.006.
血清β-HCG値がRPOCの手術前診断に役立つかどうかを評価することを目的とした前向きコホート研究です。2019年12月から2021年1月にRPOCのための子宮鏡手術を実施した女性に対して手術当日血清β-HCG値を測定した。血清βHCG値5.0 mIU/mL以上を陽性と判定し、すべての手術検体について病理組織学的に絨毛組織の有無を評価しました。
結果:
105名女性に対して手術を行い、81名(77.1%)に組織学的絨毛組織を認めました。血清βHCG値が陽性であったのは、その81名中16名(19.8%)でした。βHCG値陽性は、分娩後RPOCより中絶(外科的または薬理的)後RPOCの方が高くなりました。βHCG陰性群よりもβHCG陽性群でRPOC量も大きくなり(29.1±9.5mm vs. 23.8±8.9mm, p=0.004)、手術までの期間はより短期でした(4.8±1.7週 vs. 7.5±2.1週, p < 0.001)。
≪私見≫
この報告をなぜ取り上げたか?ですが、流産術後に明らかな内膜構造物がないのに、子宮筋層内の血流増加が退縮していなかったり、子宮鏡で明確な構造物はないのだけれど黄色の瘢痕化した絨毛遺残かもと思われる所見を認めたりします。その際に子宮鏡処置を加えるかどうか悩むことが多いんです。その際にはhCG測定は参考にならないということを確認するうえで探した報告です。
手術介入が必要かどうかは軽症な症例に関しては、不妊に影響するか、時間的経過をふまえて患者様に説明して決めていく必要がありそうです。
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文責:川井清考(院長)
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