異所性妊娠・流産予測の未来(Fertil Steril. 2024)
現在の手法では、妊娠初期の着床不明妊娠が子宮内生化学的妊娠なのか、異所性妊娠なのか判断することができません。もちろん、超音波検査により異所性妊娠であっても破裂する前に対処できるようになりましたが、生殖補助医療をおこなっていると、もっともっと良いバイオマーカーにより着床初期により異所性妊娠などのリスクを判断できないか?と日々思います。こちらを検証した報告です。
≪ポイント≫
複数バイオマーカーを組み合わせることで可能かもしれません。候補としてCG-α、PAPPA、PSG3、sFlT、TPFI2、PSG3が挙げられます。同時にhCGは予測因子には引き続きなりそうです。
≪論文紹介≫
Kurt T Barnhart, et al. Fertil Steril. 2024 Sep;122(3):482-493. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.04.028.
早期妊娠の生存率と着床部位を特定するための多重化予測モデルを開発するために、候補バイオマーカーの組み合わせを評価することを目的としました。24の候補バイオマーカーを複数の機械学習ベースの手法で評価し、バイオマーカーの多重化により早期妊娠の正常・異常の診断が向上するかどうかを評価しました。3大学病院にて、妊娠初期の疼痛および/または性器出血を訴えた218名の女性(75名:継続妊娠、68名:異所性妊娠、75名:妊娠初期流産)を対象としました。
結果:
3つのバイオマーカー(CG-α、PAPPA、PSG3)を用いた分類回帰木(Classification and Regression Tree, CART)分析を用いたモデルは、最大感度93.3%、最大特異度98.6%を予測できました。重複する3つのバイオマーカー群(sFlT、TPFI2、PSG3)を用いたモデルでは、最大感度98.5%、最大特異度95.3%を予測できました。
≪私見≫
私が医者をやっている間に臨床応用/研究まで達成し、このブログを読み直すことがあるかどうか不明ですが、医療がどんどん進歩していくのは良いことです。
バイオマーカーCG-α、PAPPA、PSG3は妊娠生存率の予測に使用でき、sFlT、TPFI2、PSG3は着床部位の予測に使用できそうです。この報告は6-7週台での判断ですが、どうにか4-5週代で判断がつくようになってほしいです。
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文責:川井清考(院長)
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