卵子融解後の胚盤胞再凍結は成績が低下する?(Fertil Steril. 2024)

卵子凍結が増えてきています。融解後は移植するレシピエントは内膜を同期させて再凍結せずに胚盤胞移植をするのと、胚盤胞に発育した胚を再凍結し別の周期で移植するのとで成績が異なるのでしょうか。
提供卵子でのデータですが、メディカル・ノンメディカルで卵子凍結をおこなっている患者への説明にも役立つと思いご紹介いたします。

≪ポイント≫ 

卵子凍結を融解後、そのまま胚盤胞移植を実施しても、再凍結し別周期で移植をしても成績は大きく変化しません。

≪論文紹介≫ 

Lauren Barrison, et al. Fertil Steril. 2024 Sep;122(3):535-536. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.04.027.

Sibling oocytesによる新鮮胚移植と凍結融解胚移植を比較し、凍結ドナー卵子周期における妊娠転帰を評価したレトロスペクティブコホート研究です。2016年から2021年にDonor Egg Bank USAの凍結保存卵子を用いたドナー卵子融解周期を対象としました。1名の女性から2名の異なるレシピエントに提供した症例を対象とし、1名のレシピエントは新鮮胚盤胞移植を受け、もう1名のレシピエントは凍結保存融解胚盤胞移植を受けました。主要評価項目は妊娠継続(8週時点)とし、副次評価項目は他の妊娠・胚発生に関わる予後としました。
結果:
1,210周期(新鮮胚移植605周期、凍結融解胚移植605周期)を解析対象としました。ドナー女性は平均年齢 25.5歳、平均BMI 23.0、平均AMH 5.9ng/mL、平均AFC 28.3個)、2群のレシピエントの年齢は同様でした(平均年齢42歳前後)。新鮮胚移植群の2.8%、凍結融解胚移植群の1.3%が精巣内精子を使用しました。
融解卵子は共に6.7±0.9個、新鮮胚移植群と凍結融解胚移植群の有効胚率と移植胚数は55.6±23.6% vs. 58.8±25.3%、1.2±0.4個 vs. 1.1±0.3個で差がありませんでした。新鮮胚移植群と凍結融解胚移植群の着床率と妊娠継続率は67.9% vs. 68.9%、51.2% vs. 49.6%で差を認めませんでした。

≪私見≫

過去の報告で提供卵子の治療成績における一定の方向性は定まっていません。
クリニックによる技術の差なのでしょうか。今後も注視していきたいと思います。

  • ドナー卵子は凍結・新鮮で成績に影響しない(RCT)
    Ana Cobo, et al. Hum Repaired. 2010 Sep;25(9):2239-46. doi: 10.1093/humrep/deq146.
  • ドナー卵子は凍結・新鮮で成績に影響する(SART study)
    Rachel M Whynott, et al. Fertil Steril. 2022 Apr;117(4):803-810. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.01.008.
  • ドナー卵子の胚移植は新鮮胚移植の方がよい(レトロスペクティブスタディ)
    Iris G Insogna, et al. JAMA. 2021 Jan 12;325(2):156-163. doi: 10.1001/jama.2020.23718.

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文責:川井清考(院長)

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