妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

妊娠中のメトホルミンは動物実験(ラット)で催奇形作用が報告されていること、妊婦は乳酸アシドーシスを起こしやすいことから妊婦には禁忌となっています。
ただし、ヒトでは妊娠初期にメトホルミンを内服していた場合の催奇形性に関するメタアナリシスの結果から、そのリスクの上昇は示されず、メトホルミンの催奇形性は否定的となっています。
Cameron Gilbert, et al.Fertil Steril. 2006 Sep;86(3):658-63. doi: 10.1016/j.fertnstert.2006.02.098.
妊娠中のメトホルミンは周産期転機も有効性が認められており、「オフラベル」で使用されることが多いのですが、現在の議論の争点は長期予後となっています。今回は、神経発達予後を評価したメタアナリシスをご紹介いたします。

≪ポイント≫ 

メトホルミンの胎内曝露は、14歳までの小児における神経発達の有害な転帰とは関連していないようです。

≪論文紹介≫ 

Hannah G Gordon, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Sep;231(3):308-314.e6. doi: 10.1016/j.ajog.2024.02.316.

妊娠中の母親のメトホルミン使用が子供の神経発達転帰に及ぼす影響を検討することかどうかを調査したシステマティックレビュー・メタアナリシスです。MEDLINE、Embase、Web of Science(Core Collection)を開始時から2023年7月1日まで検索しました。
結果:
7研究が組み入れ基準を満たし、メトホルミンを妊娠中母親が内服していた児7,641名を含む14,042名のコホート(最長14歳まで)が含まれていました。妊娠中のメトホルミン使用は、乳児期における神経発達遅延(RR、1.09;95%CI、0.54-2.17;3研究;9668児)および3~5歳における神経発達遅延(RR、0.90;95%CI、0.56-1.45;2研究;6118児)とは関連しませんでした。妊娠中のメトホルミン使用は、非服用群と比較した場合、運動スコア(平均差、0.30;95%CI、-1.15~1.74;3研究;714児)や認知スコア(平均差、-0.45;95%CI、-1.45~0.55;4研究;734児)とも関連しませんでした。組み入れられた研究は質が高く、バイアスのリスクは低いと判断されています。

≪私見≫

国内ではメトホルミンは妊娠中禁忌のままですが、PCOS含めて不妊治療で使うことが多くなってきています。不妊治療中にメトホルミンを使用し、妊娠に至った場合の説明として、催奇形性・周産期転機・中長期予後は現在のところ大きな不利益がないことを説明していくことにより、患者様の安心感が獲得できると思います。

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文責:川井清考(院長)

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