帝王切開は次回妊娠に不利?(Womens Health Rep (New Rochelle). 2024)

帝王切開は高齢出産が増えることで増加しています。医療者は、次の妊娠を考えられている方に現在わかっている範囲で帝王切開後の妊娠に与える影響を伝える必要があります。国内のビッグデータを用いた帝王切開と経腟分娩のその後の出産割合と月経困難症発症リスクを調査した報告とご紹介いたします。

帝王切開子宮瘢痕症の定義(JAMA Netw Open. 2023)
帝王切開子宮瘢痕症の疫学(Reprod Med Biol. 2023)

≪ポイント≫

帝王切開は経腟分娩に比べて、その後の出産割合がやや低下し、月経困難症が増加する可能性があります。

≪論文紹介≫

Mizuki Ohashi, et al. Womens Health Rep (New Rochelle). 2024 Jan 12;5(1):22-29.  doi: 10.1089/whr.2023.0109.

日本の保険登録データを使用して、帝王切開後の妊娠可能性および月経困難症の関連性を調査したレトロスペクティブコホート研究です。国内の特定従業員ベースの健康保険会社で構成される保険登録簿に2007年から2021年の間に登録された患者のデータベースを使用しました。そのなかで、2014年から2018年に最初の出産が記録された16-40歳女性でデータを使用しました。2021年までの次回出産の有無と産後月経困難症率は、年齢による層別化と年齢マッチングを行った上で、ロジスティック回帰検定とCox比例ハザードモデルを用いて、帝王切開と経腟分娩間で比較しました。
結果:
経腟分娩群25,984名(年齢マッチング後5926名)と帝王切開群5,926名が対象女性としました。年齢マッチング後、その後の出産率は経腟分娩群18.3%、帝王切開群16.3%であり、産後月経困難症の発生率はそれぞれ6.5%と7.8%でした。層別Cox比例ハザードモデルで年齢をマッチングさせたところ、帝王切開群では経腟分娩群よりもその後の出産できる割合が少なくなりました(HR 0.86 , 95%CI 0.79–0.94)。また、帝王切開群では月経困難症リスクが高くなりました(HR 1.18 , 95%CI 1.03–1.36)。

≪私見≫

医療統計データサービスを事業内容としている株式会社JMDCのデータベースを使用した報告です。この会社は、保険者支援の中で健康保険組合より二次利用許諾を得て受領したレセプトデータ及び健診データの匿名加工データから、1,000万人を超える規模の医療ビッグデータを構築し、研究にも提供している会社のようです。

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文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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