帝王切開子宮瘢痕症の疫学(Reprod Med Biol. 2023)

帝王切開子宮瘢痕症の発症頻度やリスク因子をまとめてくれた総説をご紹介いたします。こちらでは、帝王切開子宮瘢痕の治療や帝王切開子宮瘢痕症の妊娠に与える影響などにも触れられていますが疫学中心にご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

帝王切開子宮瘢痕症の発生率は、帝王切開回数、術式、状況によって異なります。帝王切開子宮瘢痕症の組織学的所見は線維化と部分の子宮腺筋症化が特徴的な所見です。

≪論文紹介≫

Shunichiro Tsuji, et al. Reprod Med Biol. 2023 Aug 9;22(1):e12532.  doi: 10.1002/rmb2.12532.

  1. 帝王切開子宮瘢痕症の発生率
    帝王切開子宮瘢痕症の発生率は経腟超音波検査で24~70%とされています。今まで帝王切開子宮瘢痕症の定義が様々だったため、帝王切開の凹みが2mmとなったのでもっとばらつきが少ない有病率が今後でてくることが考えられます。測定時期として、排卵期・増殖期に比べて分泌期(排卵後)では診断しにくいことがわかっています。診断方法は経腟超音波検査で評価していくのはスクリーニングとしては大事ですが、二次的なポリープや内膜の状態などの評価は子宮鏡が、大きさ・形状などの客観的な評価はMRIが良いかもしれません。
  2. 帝王切開子宮瘢痕形成の原因
    • 帝王切開回数に応じて帝王切開子宮瘢痕リスク上昇が報告されています。
      ほとんどの論文が3回まで上昇傾向が続くとしています。
    • 子宮口開大度(帝王切開時)が上がるにつれて、帝王切開子宮瘢痕リスク上昇が報告されています。緊急帝王切開が予定帝王切開術より帝王切開子宮瘢痕リスクが高いとされている報告もありますが、否定的な論文もあります。
    • 子宮の縫合方法は様々な意見があります。Barbes sutureや最近のRCTも今回の総説後に出てきていますので今後出てくるシステマティックレビューに期待です。
    • 子宮切開レベルが低いと帝王切開子宮瘢痕リスク上昇が報告されています。
    • 骨盤内癒着が起こると帝王切開子宮瘢痕リスク上昇が報告されています。これは創傷治癒の段階で帝王切開部への癒着などによる外力が作用することにより瘢痕リスク上昇がみられるとしています。
    • 産科合併症(多胎妊娠、前期破水、妊娠高血圧症候群)が多いと帝王切開子宮瘢痕リスク上昇が報告されています。
  3. 帝王切開子宮瘢痕形成の組織病理
    帝王切開子宮瘢痕部には充血した子宮内膜、ポリープ形成、リンパ球浸潤、縫合糸の残存、毛細血管拡張、内膜間質における遊離赤血球の存在、内膜の断片化や欠損があるとされており、筋線維密度が他の部位に比べて低いこと、瘢痕部の局所的子宮腺筋症化がみられることが報告されています。
    全体として、帝王切開子宮瘢痕は線維化と局所的子宮腺筋症化が特徴的な初見と考えられています。

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文責:川井清考(院長)

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