帝王切開子宮瘢痕症の定義(JAMA Netw Open. 2023)

帝王切開子宮瘢痕部の凹みをdefect、niche、isthmoceleなどと表現されます。
凹みは大小を気にしなければ、約60%の女性に生じるとされています。
凹みに伴い症状がある場合に、帝王切開瘢痕症候群、帝王切開瘢痕部症候群などと呼ばれてきましたが、国内では「帝王切開子宮瘢痕症」、海外では「Cesarean scar disorders(CSDi)」で今後統一されます。

CSD(帝王切開子宮瘢痕、ニッチ)の定義
「経腟超音波検査で評価された帝王切開瘢痕部位の子宮筋層における少なくとも2mmのくぼみ」とEuropean Niche Taskforceにより定義。
I P M Jordans, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019 Jan;53(1):107-115. doi: 10.1002/uog.19049.
CSDi(帝王切開子宮瘢痕症)の定義
CSDがあり、下記に示す主症状が1つ以上,副症状が2つ以上ある場合をCSDiと定義。
①主症状
月経後に続く点状出血/子宮出血時の痛み/胚移植時のカテーテル挿入困難/子宮内貯留液がある続発性原因不明不妊
②副症状
性交痛/異常帯下/慢性骨盤痛/性交を避ける/異常性器出血に伴う悪臭/続発性原因不明不妊/ART不成功例/ネガティブセルフイメージ/レジャー活動中の不快感

CSDiという用語を提唱した2023年に国際的な専門家が集まり議論した際の報告をご紹介します。

≪論文紹介≫

Saskia J M Klein Meuleman, et al. JAMA Netw Open. 2023 Mar 1;6(3):e235321. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.5321.

臨床症状のある帝王切開瘢痕ニッチを構成する臨床病態の定義についてコンセンサスを得て、この病態の診断基準と統一した命名法に合意することを目的に行なった調査です。コンセンサスに基づく修正電子デルファイ(eDelphi)研究、合意率(RoA)は70%以上としました。2021年11月から2022年5月にオンライン質問票で調査しました。
結果:
招待された60名の専門家のうち31名(51.7%)が参加し、その大多数は大学付属病院に勤務し(31名中28人名[90.3%])、婦人科良性疾患を専門とし(31名中20名[64.5%])、ヨーロッパに勤務していました(31名中24名[77.4%])。参加者全員が、臨床症状のある帝王切開瘢痕ニッチに起因する病態と、超音波所見のみから区別される病態に対する新しい用語の妥当性を強調しました。専門家たちは、この病態をCesarean scar disorders(CSDi)と命名することに同意し、少なくとも1つの一次症状または2つの二次症状を伴う子宮ニッチと定義しました(RoA、77.8%)。

≪私見≫

ニッチは帝王切開後の女性の60%に観察され、全体の25%は3mm未満の残存子宮筋層を有する大きな欠損を有するとされています(vanderVoet LF, et al. BJOG. 2014.; Stegwee SI, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2019) 。そしてニッチを形成する女性の30-40%に臨床症状を伴うとされています。

臨床症状は、帝王切開後に症状が発現したもの、他の同様の症状をもつ疾患が除外できていること、一定期間繰り返すことが診断する際に注意しないといけないポイントとなります。

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文責:川井清考(院長)

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