内膜コンパクションの生殖予後に対するメタアナリシス(Hum Reprod Open. 2024)
「子宮内膜厚は胚移植決定日から胚移植日までに薄くなっていると患者様が不安になるから、あまり薄く測るな。」と慣習的に学んできました。ただ、2019年Hassらによって内膜コンパクション(黄体ホルモン分泌もしくは投与後、内膜厚がやや減少すること)が観察されることがわかってきました。内膜コンパクションが生殖予後に影響する、しないには様々な意見があります。
内膜コンパクションの生殖予後に対するメタアナリシスが報告されましたのでご紹介いたします。
《ポイント》
移植決定日から移植日までの内膜変化(コンパクション)は、あまり気にしなくてよさそうです。今回のメタアナリシスでは、内膜コンパクションは臨床的妊娠率および継続妊娠率の上昇と関連しました、生児出生率とは関連がありませんでした。
《論文紹介》
Hannan Al-Lamee, et al. Hum Reprod Open. 2024 Jun 20;2024(3):hoae040. doi: 10.1093/hropen/hoae040.
子宮内膜コンパクションは、体外受精実施女性の生殖予後と影響するかどうかを調査したメタアナリシスです。文献検索は、PubMed、Cochrane Library、MEDLINE、Embase、Science Direct、Scopus、Web of Scienceを用い、データベース開設から2023年5月までに独立した著者2名により実施されました。
主要評価項目は生児出生率としました。副次評価項目的は、妊娠検査薬陽性、臨床的妊娠率、継続妊娠率、流産率としました。
結果:
スクリーニングされた4,030件の報告のうち、21件のコホート研究を対象としました(n=27,857)。内膜コンパクションあり群と内膜コンパクションなし群における生児出生率に差は認めませんでした(OR 0.95;95% CI 0.87-1.04)。妊娠的妊娠率は内膜コンパクションあり群で高く(OR 1.61;95%CI 1.09-2.38)、特に内膜コンパクション>15%は内膜コンパクションなし群と比較して高くなりました(OR 3.52;95%CI 2.36-5.23)。継続妊娠を妊娠12週未満としたとき、内膜コンパクションあり群は内膜コンパクションなし群に比べ継続妊娠率が高くなりました(OR 1.83;95%CI 1.15-2.92)。妊娠検査薬陽性(OR1.54;95%CI0.97-2.45)または流産率(OR1.06;95%CI0.92-1.56)については、内膜コンパクションあり群と内膜コンパクションなし群に差を認めませんでした。
《私見》
排卵後プロゲステロンレベルの上昇により、子宮内膜増殖が停止し、子宮内膜腺の発達、免疫細胞の増殖、血管新生が増加するため、子宮内膜の密度は増加するが、容積は増加しないために内膜コンパクションは起こると推測されています。
エストラジオール濃度やプロゲステロン濃度と内膜コンパクションとの相関はなさそうです。
まだまだ胚移植方法や内膜コンパクションの定義が様々なため、しっかりした結果となっていませんが、今後、質が高い研究が増えてきて方向性が定まっていくのかなと感じています。
過去にもブログにて取り上げていますのでご参照ください。
移植時には子宮内膜がぎゅっと詰まった(compaction)方が良い?
HRT周期のプロゲステロンによる子宮内膜厚変化は妊娠には影響しない(論文紹介)
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文責:川井清考(院長)
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