胚移植手技は治療成績に影響(F S Rep. 2024)

体外受精において、胚移植は最終段階です。
そして、手技として成績に差がでることがわかっています。
注意すべき点は複数あり、以前のブログでもご紹介させていただきました。
胚移植手技の注意点(2022年レビュー)
胚移植シミュレーターで評価した手技ポイントと胚移植成績の関連を示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

胚移植手技は生殖医療成績に影響を与えます。

≪論文紹介≫

Dana B. McQueen, et al. F S Rep. 2024 doi: 10.1016/j.xfre.2024.04.003

胚移植技術と妊娠転帰との関連を評価することを目的に行われたノースウェスタン大学での後方視的コホートを用いた前向き観察研究です。2015年から2020年に胚移植を受けた患者を対象としました。14名の医師が胚移植シミュレーター上で25回の模擬胚移植を行い、定量的なパフォーマンス指標を測定しました。それと別に、それぞれの医師の胚移植成績を2015年1月1日から2020年1月1日までのすべての新鮮/凍結融解胚移植から後方視的に収集しました。胚移植技術と各医師の胚移植成績(生児出生率など)の関連を評価しました。
胚移植は腹部エコーガイド下にてWallace SureViewカテーテルまたはWallace Styletカテーテルを用いて行われました。
結果:
胚移植手技は、子宮底部への接触、子宮底部までの距離、胚移植時間、手技時間、子宮頸管のナビゲート時間、胚排出速度、胚排出後の待機時間、胚移植シミュレーターの総合スコアなど、医師間で差が認められました。交絡因子を調整した結果、胚移植時間は生児出生と有意に関連し、時間が長いほど生児出生率は低下しました。子宮底部への移植部位が近いこと、胚排出速度が速いことは、いずれも子宮外妊娠率が高いことと関連していました。

≪私見≫

胚移植シミュレーター(VirtaMed社)は、子宮底部への接触回数、胚排出の子宮底部までの距離、胚移植時間(秒)、内子宮口通過時間(秒)、胚排出速度(ml/s)、胚排出後の待機時間(秒)、全処置時間(秒)、子宮頚管内の移動に要した時間(秒)などがわかるようです。医師側の手技レベルだけではなく、子宮筋腫・形態障害を含めた子宮側のコンディションも人によって異なります。体外受精に関わり始めて10年以上経ちますが、一番手技として安定させるのも指導するのも難しいのは胚移植だと感じています。現在のところ、当院では複数医師間での治療成績には差がないことを確認していますが、高いレベルでの手技の均一化が求めていく日々の努力が必要です。

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文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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