PCOS女性に対するレトロゾール投与法(F S Rep. 2024)

最近では治療法として確立されているPCOSのレトロゾール使用ですが、最初の報告は2001年Fertil SterilにMitwally MFとCasper RFがクエン酸クロミフェンによる治療に失敗したPCOS女性に適応外使用した12名のPCOS女性に対する前向き研究からでした。使用法はクエン酸クロミフェンと同様に月経初期から5日間投与が一般的となっていますが、レトロゾールは半減期が短いため、増量がよいか使用期間の延長がよいか議論がつづいています。こちらに対して調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

レトロゾールを5mgおよび/または10日間延長投与で開始した場合、頻繁に使用される2.5mgを5日間投与した場合と比較して排卵率が改善した。

≪論文紹介≫

Rachel S. Mandelbaum, et al. F S Rep. 2024 doi: 10.1016/j.xfre.2024.03.004

PCOS女性における排卵誘発のための最適なレトロゾールレジメンを決定することを目的とした2015年から2022年までの単一生殖医療施設で実施されたレトロスペクティブコホート研究です。
PCOS女性52名189周期を対象としました。患者には4つのレトロゾールレジメンを実施しました。(第1群:2.5mgを5日間、第2群:2.5mgを10日間、第3群:5mgを5日間、第4群:5mgを10日間)。主要評価項目は排卵率、副次評価項目は複数卵胞発育、臨床的妊娠率で、二元ロジスティック回帰で解析した。時間依存性解析にはKaplan-MeierとCox比例ハザード回帰モデルを用いました。
結果:
平均年齢は30.9歳(SD、3.6歳)、平均BMIは32.1(SD、4.0)でした。第1群と比較して第2群(OR、9.12;95%CI、1.92-43.25)、第3群(OR、3.40;95%CI、1.57-7.37)および第4群(OR、5.94;95%CI、2.48-14.23)では、排卵率が改善しました。 累積排卵率は全群で84%を超えたが、5mgおよび/または10日間投与群では有意に早く排卵に至った。複数卵胞発育は第1群と比較して第2-4群では増加しませんでした。第2-4群では妊娠期間も改善しました。

≪私見≫

この報告では、妊娠率改善もうたっていますが、第1群:2.5mg 5日間 62周期、第2群:2.5mg 10日間 17周期、第3群:5mg 5日間 57周期、第4群:5mg 10日間 53周期と周期数が多くなく、妊娠率もそれぞれ14.8%、6.7%、22.0%、13.6%とばらついていますので評価が難しいと思います。まだまだ排卵時のエストラジオールがどの程度あれば妊娠率が担保されるのか質が高い研究がないのが実情です。 排卵までの期間ですが、こちらはやはり長期投与の方がKaplan-Meierをみていると効果的なように見えます。育ち始めたらレトロゾールを中断すると排卵時までのエストラジオールの回復も期待できるでしょうが、モニター回数が増えてしまうため非現実的です。今後も注視していきたいテーマです。

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文責:川井清考(院長)

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