double stimulationは成熟卵子数がどのように変化する(Hum Reprod. 2024)

UbaldiやMassinらが1周期に2回採卵できるdouble stimulation法を提唱しています。がん・生殖などの限られた期間で治療を要する場合だけではなく、卵巣予備能が低い患者への福音となるのでしょうか。Ubaldiは採卵後5日休薬後、Massinは採卵後1日休薬後の卵巣刺激開始ですが、L Boudryの刺激を止めずに連続して卵巣刺激をおこなった場合のdouble stimulation法の報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

卵巣刺激方法によりますが、double stimulation法のtotal成熟卵子数は従来の卵巣刺激の成熟卵子数と比較し、増加が保証されるわけではないことがわかりました。

≪論文関係≫

L Boudry, et al.  Hum Reprod. 2024 Jan 10:dead276.  doi: 10.1093/humrep/dead276.

2019年10月から2021年9月にdouble stimulation法の成熟回収卵子数増加への有効性を検証するために単一生殖医療施設で行われたRCTです。r FSHによる従来のアンタゴニスト法を実施し、17mm以上の発育卵胞が2個以上となったトリガーする段階で11mm以上の発育卵胞が9個以下の症例に限定しリクルートされました。A群では、hCGトリガーで34~36時間後に採卵し新鮮胚移植を行いました。B群では、GnRHアゴニストトリガーを実施し初回採卵を実施し、卵巣刺激は中止せず継続し13日刺激以内に17mm以上の発育卵胞が1つ以上育った場合のみhCGトリガーで2回目の採卵を実施しました。B群はフリーズオールとしました。採卵は10mm以上の卵胞はすべて穿刺しました。主要転帰は回収成熟卵子数としました。副次評価項目としてCOC数、良質胚数(3日目/5日目)、妊娠継続率、総ゴナドトロピン量としました。
対象は25~40歳、AMH 1.5ng/ml以下、AFC 6以下、または前回採卵時5個以下のpoor responderとしました。70名をリクルートし48名が組入基準をみたし、1:1に割り付けられました。2名の患者が脱落し、23名の患者がA群に、23名の患者がB群となりました。
結果:
患者背景は差がありませんでした。A群とB群でtotal COC数、成熟卵子数は同じでした[5.3±2.7個vs. 5.3±3.0個(P = 0.95);4.1±2.4個vs. 4.3±2.7個(P = 0.77)]。3日目良好胚数も同じでした(3.0±2.0個vs. 2.7±2.0個;P = 0.63)。B群では、2回目の刺激に対する反応不十分によるキャンセル率は39.1%(9/23)でした。両群の1回目の刺激に注目すると、患者背景や総ゴナドトロピン量、発育卵胞数に差がありませんでしたが、結果として初回採卵後のCOCおよび成熟卵子数は、B群よりA群が多くなりました[5.3±2.7個vs. 3.3±2.2個、差95%CI(0.54~3.45)、P = 0.004、および4.1±2.4個vs. 3.0±2.2個、差95%CI(-0.15~2.6)、P = 0.05]。3日目良好胚数も同様にA群で多くなりました(3.0±2.0個対1.9±1.7個;P = 0.02)。

≪私見≫

やり方によると思いますが、卵巣予備能が低下している女性に対してdouble stimulation法が決して有用ときまったわけではないことがわかりますね。
double stimulation法を意識し過ぎるより、一つ一つの採卵のベストを向き合うことが好ましいということが現れた報告だと感じています。

過去のdouble stimulationの方法のシェーマ

若くて卵巣機能が保たれているのに回収卵子が少ない場合は?(論文紹介)
double stimulationの予想回収卵子数はAMHで予想可能(Hum Reprod. 2023)
黄体期卵巣刺激と卵胞期卵巣刺激の正常核型胚割合は変わらない(論文紹介)

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文責:川井清考(院長)

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