double stimulationの予想回収卵子数はAMHで予想可能(Hum Reprod. 2023)

DuoStim(double stimulation)は月経1周期に2回採卵を行う方法です。
卵巣予備能が低下している方は、回収卵子数が増加するに伴い累積生児獲得率が上昇することがわかっていますので、一度に多く回収卵子数がとれない方にはdouble stimulationが有効なのではないか?という議論が以前よりされていました。ただし、double stimulationによってどれくらい効率が増加するか不明な点がありましたので、AMHでdouble stimulation後の回収卵子数が予想できるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

回収卵子数が少ない女性に対してdouble stimulationの予想回収卵子数はAMHである程度予想がつくことがわかりました。

≪論文紹介≫

A La Marca, et al.  Hum Reprod. 2023 Jul 20;dead148.  doi: 10.1093/humrep/dead148.

double stimulation後の回収卵子数の予測におけるAMHが役立つかどうかを調査することを目的としました。2021年1月から2022年9月にdouble stimulationを実施した116名を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。主要評価項目は、3ヶ月以内のAMH値とdouble stimulation後に採取された卵子数との相関としました。
結果:
AMHはdouble stimulationでの回収卵子数と相関していました(R 0.61; CI 0.44-0.70; P < 0.0001)。 1回目の刺激(中央値: 4個、IQR: 2-6個)と2回目の刺激(中央値:6個、IQR: 3.2-8個)で2回目の刺激の方が回収卵子数は増加しましたが、成熟卵子数には差がありませんでした。1回目の刺激後、患者の68%が少なくとも1個の有効胚盤胞を獲得できましたが、2回目の刺激後では74%が少なくとも1個の有効胚盤胞を獲得できました。 線形回帰分析から、AMHが0.25ng/ml増加するごとに、両方の刺激終了時に回収された卵子が1個追加されることが推測されます(R2:0.32、P < 0.0001、double stimulation後の回収卵子数;y =6.28+3.9 ×AMH)。

中央値

25%ile

75%ile

初回採卵

回収卵子数(個)

4

2

6

成熟卵子数(個)

3

1

4

成熟率(%)

80

50

100

正常受精数(個)

2

1

3

正常受精率(%)

75

50

75

胚盤胞到達率/患者(個)

1

0

2

Duostim
(2回目採卵)

回収卵子数(個)

6

3.2

8

成熟卵子数(個)

4

3

7

成熟率(%)

85

66

100

正常受精数(個)

3

2

5

正常受精率(%)

66.7

50

83

胚盤胞到達率/患者(個)

1

0

3

≪私見≫

卵巣予備能低下の患者に対してdouble stimulationが有効かもしれません。
費用対効果の観点から、がん・生殖の患者に限って行ってきましたが今後見直しも検討してきたいと思います。
この報告ではAMH 1.23±0.95ng/mL 平均年齢 38.48±4.65歳を対象としていて、卵巣刺激はFSH300単位GnRHaトリガーのGnRHアンタゴニスト法を採用し、double stimulationは初回採卵の5日後から開始しています。

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文責:川井清考(院長)

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