モザイク胚移植の費用対効果含めた検討(J Assist Reprod Genet. 2024)

モザイク胚移植の安全性に関する決定的なデータがないことはありません。もちろん、PGTを行っていない胚では、染色体をみないで戻しているわけですから、モザイクパターンによってはPGTを実施しない胚より生児獲得率が期待できる場合もあるでしょう。モザイク胚しかない不妊カップルにとって、モザイク胚移植を行うか、PGT-Aを行う追加体外受精を実施するかを治療成績と費用(アメリカ価格)の観点から評価した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

モザイク胚移植は、42歳以上の非倍数体胚しか残っていない患者にとって、PGT-Aによる体外受精の追加サイクルよりも優れた選択肢になり得ます。費用負担などから再度体外受精を行えない不妊カップルにとっては、カウンセリング含めた情報提供をおこない、モザイク胚移植をおこなうことも情報提供する必要があります。

≪論文紹介≫

Arian Khorshid, et al.  J Assist Reprod Genet. 2024 Jan 17.  doi: 10.1007/s10815-024-03027-7. 

年齢層別(35歳未満、35~37歳、38~39歳、40~42歳、43~44歳、44歳以上)に基づいて決定分析モデルを設計しました。モデル入力には、過去の文献から体外受精成功率、臨床妊娠、生児獲得率、およびPGT-Aによる体外受精、胚移植、生児出産、羊水穿刺、流産手術にかかる費用を含めました。
結果:
43歳未満の患者において、PGT-Aによる体外受精の追加サイクルは、モザイク胚移植と比較して相対生児獲得率が高く(35歳未満:+20%、35~37歳:+15%、38~39歳:+17%、40~42歳:+6%、平均:+14.5%)、平均追加費用は16,633USDでした。42歳以上の患者では、モザイク胚移植の方が生児獲得率は高く(43-44歳、+5%、>44歳、+3%、平均、+4%)、PGT-Aによる体外受精の追加周期よりも平均9,572USD安くなりました。

≪私見≫

料金設定は各医療費を日本円に換算した金額(1USD = 140JPY )だと、羊水穿刺:約24万、分娩:約215万、PGTを用いた体外受精:約316万、流産手術:約20万、胚移植:約89万です。国内価格と比べると非常に高額です。費用対効果モデルは国内価格ではあてはめられませんが、今後、保険診療と自費診療での体外受精を検討された時に同様の検討をしていくことにより適切な情報提供ができる可能性がありそうですね。

胚盤胞のモザイクパターンは年齢などによって変わる(F S Rep. 2023)
胚盤胞のsegmental aneuploidyの特徴
染色体異数性胚の着床前・後の発生はどうなっているの?(基礎研究)
AMHは着床前診断正常胚の割合と無関係(レトロスペクティブ研究2023)
不妊症と診断された女性の受精卵は染色体異常になりやすい?(J Assist Reprod Genet. 2023)

#生殖補助医療
#モザイク胚
#費用対効果
#PGT
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張