妊娠初期の流産予測に役立つ超音波検査(Am J Obstet Gynecol. 2020)
妊娠初期には超音波検査を行います。本報告では、EAGeR試験に基づく研究結果をもとに、妊娠初期流産の予測因に超音波検査(胎児心拍数、胎児の大きさ、卵黄嚢の直径、絨毛膜下血腫の存在)がなり得るかを解説します。妊娠6週から8週の間の胎児心拍数と胎児の大きさが流産を予測する因子となることが示されています。
これらのデータを活用することで、妊娠初期の流産リスクをより正確に予測し、適切な情報提供することが可能になります。
≪ポイント≫
胎児心拍数が遅いこと、CRLが週数に比べて小さいこと、共に満たすと流産リスクは異常がない場合に比べて2倍程度(15%ほど)高くなることがわかりました。(若年女性にて)
≪論文紹介≫
Elizabeth A., et al. Am J Obstet Gynecol. 2020 Aug; 223(2): 242.e1–242.e22. doi: 10.1016/j.ajog.2020.02.025
妊娠初期超音波検査で一般的に観察する特徴から妊娠初期流産を予測する因子(週数ごとのカットポイント)を調査することを目的としました。
EAGeR(Effects of Aspirin in Gestation and Reproduction)試験に登録された617名の妊婦二次解析です。妊娠6w0dから8w6d のCRL(頭殿長)と胎児心拍の妊娠初期流産との関係を妊娠6週、7週、8週別々に検討しました。
結果:
64名妊婦が胎児心拍を確認した超音波検査後に妊娠初期流産(10.4%)、7名が追跡不能(1.1%)、546名が生児出産(88.5%)に至りました。胎児心拍数およびCRL(妊娠6週、7週、8週それぞれ、≦122、123、158bpm;≦6.0、8.5、10.9mm)は妊娠初期流産の独立した予測因子であり、両方を満たした場合の流産リスクが非常に高くなりました(RR 2.08;95%CI 1.24-2.91)。卵黄嚢の直径、絨毛膜下血腫の存在は流産予測因子にはなりませんでした。
CRL 小さい | 胎児心拍遅い | リスク (95% CI) | 差 (95% CI) | 相対リスク (95% CI) |
---|---|---|---|---|
No | No | 5.0% (1.5–8.5%) | 基準 | 基準 |
No | Yes | 12% (2.1–22%) | 7.0% (−3.3% to 17%) | 1.33 (0.12–2.53) |
Yes | No | 15% (8.3–23%) | 10% (2.5–18%)b | 1.79 (0.86–2.71) |
Yes | Yes | 21% (15–27%) | 16% (9.1–23%)b | 2.08 (1.24–2.91) |
≪私見≫
過去の報告では妊娠初期心拍数との関係を妊娠6~7週115bpm以下、妊娠7~8週145bpm以下としています。(Stefos TI., et al. J Clin Ultrasound 1998;26:33–6.)
1990年代の論文でしたのでアップデートされたことは日々の診察で活用できる内容だと思っています。このデータは妊娠28歳前後の女性を用いた解析となっています。
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文責:川井清考(院長)
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