PPOSプロトコルの胚質はアンタゴニストプロトコルより劣る?(論文紹介)

PPOSプロトコルは様々な生殖医療施設で一般的に行われるようになってきました。PPOSプロトコルの胚質はアンタゴニストプロトコルと変わらないという報告を以前ブログでも紹介いたしました。(https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_359.html
最近PPOSプロトコルにネガティブな報告が出てきていますので、ご紹介させていただきます。
Angel Hsin-Yu Pai, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2023 Aug 8;21(1):72.  doi: 10.1186/s12958-023-01124-3.

≪ポイント≫

PPOSプロトコルの胚質はGnRHアンタゴニストプロトコルに比べて、胚盤胞到達率と正常核型率は同等もしくは軽度低下する可能性があります。

≪論文紹介≫

2018年1月から2021年12月に単一生殖医療周期センターで実施されたPGT-A 128周期(27~45歳)の生殖医療成績をPPOSプロトコルとGnRHアンタゴニストプロトコルで比較検討しました。
結果
PPOS群は、GnRHアンタゴニスト群と比べて、胚盤胞到達率および正常核型胚率が低下しました。女性年齢を高齢者群(38歳以上)と若年者群(38歳未満)に層別化し、サブグループ解析を行いました。高齢者群では、PPOS群はGnRHアンタゴニスト群より胚盤胞到達率(45.8±6.1% vs. 59.9±3.8%, p = 0.036)、正常核型胚率(5.4% vs. 26.7%、p = 0.006)より低くなりました。若年者群では、胚盤胞到達率(63.5±5.7% vs. 67.1±3.2%、p=0.45)、正常核型胚率(30.1%vs. 38.5%、p=0.221)ともに有意差を認めませんでした。正常核型胚移植後の着床率、生化学的妊娠率、臨床的妊娠率、生児獲得率、流産率などは両群間で差を認めませんでした。

≪私見≫

PPOSプロトコルを選択すると、一般集団女性とポセイドングループ1女性で生児獲得までの期間が延長すると報告されています(Chen H, et al. Fertil Steril. 2022;118:701–12、Du M, et al. Front Endocrinol. 2021;12: 705264)。
PPOSプロトコルは全胚凍結しか選択できないプロトコルですし、プロゲスチンが作用しすぎると刺激日数が増加することも懸念されます。
迷った場合には、GnRHアンタゴニスト法でよいのかもしれません。

文責:川井清考(院長)

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