PPOSの胚質はアンタゴニスト法を変わらない?(論文紹介)
PPOS(Progestin-primed ovarian stimulation)は黄体ホルモンを早発LHサージ抑制として使用するため、新鮮胚凍結は行えず全胚凍結となります。
ドナーエッグ、着床前検査の場合は、大前提 全胚凍結となりますから、ますます世界的にPPOS周期が増加しています。ではPPOSの臨床結果はどうなのでしょうか。
通常卵巣刺激に比べてPPOSの生殖成績は同等とされていますが、Begueríaらは一部の臨床成績が低下することを指摘しています。今回、PPOSとGnRHアンタゴニスト法で正常核型胚盤胞の割合を比較した論文をご紹介させていただきます。
La Marca Aら.Hum Reprod. 2020. DOI: 10.1093/humrep/deaa068
≪論文紹介≫
PPOSは通常の卵巣刺激を行なった患者と比べて正常核型胚盤胞の割合に差がないか調査することを目的としました。
2018年から2019年にかけて6ヶ月間に192名の女性から得られた1867個の卵子からの785個の胚盤胞を解析対象としました。PPOS(MPA 10mg/日)を受けた48名の女性と、GnRHアンタゴニスト法(fixed法:ガニレスト®️卵巣刺激7日目)で治療を受けた年齢をマッチさせた144名で比較検討を行いました。
結果:
両群とも患者背景は類似しており、生殖医療成績にも差がありませんでした。成熟卵子1個あたりの正常核型胚盤胞率はは両群とも21%でした。また、PPOS群の患者あたりの正常胚率38.7(25.5〜52.9)%、患者あたりの正常胚盤胞数(中央値、四分位範囲、IQR)は2.1(1.3-2.9)、GnRHアンタゴニスト法で治療を受けた女性では、それぞれ42(28-53.8)、2(1.3〜3.1)でした。
結論:
患者一人あたりの胚盤胞数と正常核型胚盤胞数、成熟卵子あたりの正常核型胚盤胞数は、PPOSとGnRHアンタゴニスト法を受けた女性では同等でした。
≪私見≫
PPOSとGnRHアンタゴニスト法は同等の成績であることを正常核型胚盤胞数で示した論文です。新鮮胚移植を行わない患者では有効な刺激であることがわかります。
当院ではGnRHアンタゴニスト法がメインではありますが、徐々にPPOS症例も増やしていこうかと考えています。
HMGアンタゴニスト法 | PPOS | |
女性年齢 | 37歳 | 37歳 |
AMH | 3.4ng/ml | 3.2ng/ml |
Total FSH量 | 2630単位 | 2750単位 |
卵巣刺激日数 | 11日 | 11.8日 |
正常受精卵数 | 7.2個 | 7.4個 |
患者あたりの正常核型胚盤胞数 | 2個 | 2.1個 |
患者あたりの正常核型胚盤胞割合 | 42% | 38.7% |
成熟卵あたりの正常核型胚盤胞率 | 21% | 21% |
表:患者背景と体外受精成績
文責:川井清考(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。