ノンメディカルな卵子凍結の開始について

「卵子凍結」とは将来の妊娠に備えて、卵子を体外に取り出して保存しておくことを言います。卵子凍結にはがん治療などにより卵巣の働きに影響を与え、将来、子供を持つことが難しくなる可能性があるため、病気の治療の前にあらかじめら卵子を採取して凍結保存し、妊娠する能力を温存しておく、妊孕性温存(にんようせいおんぞん)という方法があり、これを「医学的適応」の卵子凍結と言います。
一方、健康ではあるものの、今は妊娠を選択しない女性が将来パートナーとの子供を持つために若いうちの卵子を凍結しておくことを「ノンメディカル(社会的)」な卵子凍結と言います。

日本でも企業での福利厚生として開始されたり、東京都が働く女性のライフ・キャリアプラン応援事業として、職場での卵子凍結に関する正しい知識の普及や仕組みづくりを支援乗り出したこともきっかけとなり、ノンメディカルな卵子凍結への関心が高まっています。
亀田IVFクリニック幕張では、妊孕性温存目的の医学的適応の卵子凍結は2017年より行って参りました。ノンメディカルな卵子凍結に関しての開始にあたっては、日本産科婦人科学会の見解も踏まえて、慎重に検討をして参りましたが、本日2023年8月7日より受け入れを開始することに致しました。

卵巣予備能力が低下した女性は、妊娠率の低下や一般不妊治療の成績低下にはつながりませんが、体外受精を行った際の治療成績が他の不妊原因に比べてよくないことが報告されています。
卵巣予備能検査にて卵子数が少ないことを指摘された女性、子宮内膜症や卵巣嚢腫など卵巣手術歴がある、手術を検討されている女性なども、一度の卵巣刺激・採卵で卵子が数多くとれない患者様に利用しやすい価格を設定させていただきました。

ノンメディカル卵子凍結シミュレーション

1回の採卵で何個くらい卵子を凍結できるか、また、凍結保存した卵子から将来赤ちゃんを授かる確率はどれくらいか、卵子凍結の費用はどれくらいかかるのか、シミュレーションツールを作成致しました。必要情報を入力してお試しください。

https://kameda-ivf.com/CryoPreservation.php

初診予約

① 「ノンメディカル卵子凍結希望」とお伝えいただき予約をおとりください。
② 初診日には医師との面談の上、卵子凍結に向けての必要なスクリーニング検査を行い、プランを設計いたします。
*事前に日本産科婦人科学会のHP/動画をみて来院ください。
「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」
当院のブログでは、この動画をよりわかりやすく視られるように解説しています。
https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_1005.html
*1年以内の健康診断や他院で受けたプレコンセプション検診(ブライダルチェック)の結果がありましたら、コピーしてご持参ください。

治療受診回数

1回の卵子凍結あたり、月経周期3-4回の受診となります。

費用概算

シミュレーションをご確認ください。

一人子供を授かれる確率

過去の文献から参考にしていただければ幸いです。

表:凍結時年齢別の卵子凍結個数別にみた一人出産できる推測割合 その1

凍結時年齢 卵子凍結
10個
卵子凍結
20個
卵子凍結
30個
卵子凍結
40個
28歳 80% 94%    
34歳 75% 91% 95%  
37歳 53% 75% 87% 92%
40歳 30% 52% 65% 76%
42歳 21% 36% 49% 60%
44歳 7% 15% 21% 26%

(参考文献)
R H Goldman, et al.Hum Reprod. 2017 Apr 1;32(4):853-859.doi: 10.1093/humrep/dex008.
年齢・個数別に、少なくとも一人出産できる割合をSupplementary Table SIIより抽出

表:凍結時年齢別の卵子凍結個数別にみた一人出産できる推測割合 その2

凍結時年齢 35歳以下  N = 123 凍結時年齢 35歳より上  N = 518
凍結卵子数
累積生児獲得率(95% CI)
凍結卵子数
累積生児獲得率(95% CI)
5個 15.8 (8.4 – 23.1) 5 個 5.9 (3.6 – 8.3)
8個 32.0 (22.1 – 41.9) 8 個 17.3 (13.3 – 21.3)
10個 42.8 (31.7 – 53.9) 10 個 25.2 (20.2 – 30.1)
15個 69.8 (57.4 – 82.2) 15 個 38.8 (32.0 – 45.6)
20個 77.6 (64.4 – 90.9) 20 個 49.6 (40.7 – 58.4)
24個 94.4 (84.3 – 100) 24 個

(参考文献)
A Cobo,et al.Hum Reprod. 2018 Dec 1;33(12):2222-2231.doi: 10.1093/humrep/dey321.
ノンメディカル卵子凍結と、がん・生殖の卵子凍結の臨床成績が変わらないという論文のノンメディカル卵子凍結の臨床成績Figure 1より抽出
35歳未満の平均年齢は32.6歳、35歳より上の平均年齢は38.7歳

おわりに

ノンメディカルな卵子凍結は、女性がキャリア形成、学業など様々な理由で、妊娠を先延ばしにしたい場合、卵子凍結によりご自身の生殖能力を保存し、将来、妊娠・出産を望んだ時に、年齢が若い状態の凍結卵子での妊娠を目指すことができることができる、女性のライフプランの未来の選択肢を広げるための1つのアクションです。
仕事のキャリアアップや、妊娠・出産・育児と仕事の両立など、長期スパンで人生設計を考えたとき、妊娠したいタイミングは一人一人違います。
結婚し、そろそろ子供が欲しいと思ってから初めて検査を受けて、妊娠しにくいことがわかるケースはとても多いです。初産の平均年齢が30歳を超え、高齢妊娠も増えている現代において、卵子凍結という選択肢も含めて、プレコンセプションケアに取り組み、妊娠へ向けた体作りを早くから始めることが大切です。
卵子凍結は、メリットだけでなくリスクや、必ずしも将来の妊娠・出産に結びつくわけではないということも理解をしなければなりませんが、将来のライフプランを見つめなおしていただくきっかけになるよう、情報提供をして参りたいと思います。

文責:石川恵(事務長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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