体外受精妊娠出産後の自然妊娠は奇跡の子?(Hum Reprod. 2023)

これまでの体外受精/顕微授精は、両側卵管が閉塞している場合や重篤な男性因子などを適応としていましたので、2人目を望んだ際の自然妊娠は、ほぼ皆無でした。しかし、最近の治療適応の拡大もあり、体外受精での妊娠出産後の自然妊娠の割合が増加しています。どれくらいの女性が体外受精妊娠・出産後に自然妊娠しているのでしょうか。

≪ポイント≫

体外受精妊娠・出産後に自然妊娠できる女性は5人に1人いる計算となります。
ほとんどの症例は体外受精妊娠後3年以内の自然妊娠で、18%にあたります。
体外受精に進んだ原因にもよるので、2人目不妊治療を否定する内容の報告ではありません。体外受精妊娠・出産後に自然妊娠を希望される場合、2人目不妊治療の遅れにつながらないよう生殖医療医師に助言を仰ぎましょう。

≪論文紹介≫

Annette Thwaites, et al.  Hum Reprod. 2023 Jun 20;dead121.  doi: 10.1093/humrep/dead121.

Ovid Medline、Embase、PsycINFOで1980年から2021年9月24日まで英語で書かれた文献から、体外受精妊娠・出産後に自然妊娠を経験したことのある女性の割合を調査したシステマティックレビュー・メタアナリシスです。ランダムエフェクトメタアナリシスを採用し、体外受精妊娠・出産後に自然妊娠できた割合のプール効果推定値を算出しました。
結果:
1,108件の研究が見つかり、その中から11件の研究(5,180名の女性対象)を本レビューのため選択しました。11件のほとんどが中程度の研究の質で、追跡期間は2~15年でした。4件の研究で自然妊娠出産が報告されており、妊娠データではないため、プール効果推定値が低くでている可能性も否定できませんが、体外受精妊娠・出産後に自然妊娠できた割合のプール効果推定値は0.20(95%CI、0.17-0.22)でした。

≪私見≫

研究の報告年度も国も体外受精適応も異なるので一概には言えませんが、Resultsには興味深い記載がありました。不妊原因が明確なものはそれぞれ、体外受精後の自然妊娠の確率に影響していたので、体外受精妊娠卒業時に続けて挙児希望の場合に、事前に情報提供できそうです。

  • 体外受精後自然妊娠の大部分は最初2~3年以内:7研究
  • 母体年齢は、体外受精後自然妊娠の関連因子:6研究
  • 不妊期間が短いこと、体外受精後自然妊娠の関連因子:4研究
  • 体外受精治療回数が少ないことは体外受精後自然妊娠の関連因子:4研究
  • 原因不明不妊は体外受精後自然妊娠の関連因子:4研究

同時に、生殖医療に関わる人として、営利目的に走りすぎる過剰な体外受精治療を推奨していないかどうかは、注意を払っておく必要があります。

文責:川井清考(院長)

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