子宮内膜ポリープ切除後の胚移植のよい時期は?(Front Endocrinol (Lausanne). 2022)

採卵→子宮鏡→内膜ポリープ手術→凍結融解胚移植における手術→凍結融解胚移植の期間と生殖医療成績に注目した報告をご紹介いたします。
昨日紹介した子宮内膜ポリープ切除後の胚移植のよい時期は?(PLoS One. 2020)では、採卵前の子宮鏡内膜ポリープ診断でしたが、今回の報告は卵巣刺激により内膜過形成が起こることも懸念して卵巣刺激・採卵後に子宮鏡を実施しています。

≪ポイント≫

子宮内膜ポリープ切除後は翌周期から内膜厚などが問題なければ移植成績・周産期転機には影響を与えません。

≪論文紹介≫

Bijun Wang, et al.  Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Sep 30;13:986809.  doi: 10.3389/fendo.2022.986809.

中国で2015年1月から2020年12月に行われた採卵後子宮鏡を行った患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。子宮鏡下内膜ポリープ切除を実施した206例、内膜ポリープが認めていない3,681例を対照としました。
傾向スコアマッチングを用いて、年齢、BMI、AMH、移植胚数、移植胚ステージに基づいて参加者を1:1にマッチングさせました。手術は同一医師がおこなっています。
評価項目として術後翌周期胚移植、2周期後胚移植、3周期以上後胚移植と分類し生殖医療・周産期結果を比較検討しました。
子宮鏡直径、ポリープ切除方法は記載ありません。
結果:
術後翌周期胚移植137名、2周期後胚移植40名、3周期以上後胚移植29名であり、患者背景・治療方法に差はありませんでした。3群とも、着床率、生化学的妊娠率、流産率、臨床的妊娠率、生児出生率に有意差を認めませんでした。早産、低出生体重児、巨大児、SGA児、LGA児、出生時体重、出生時身長、アプガースコアなどの周産期転帰にも差を認めませんでした。

≪私見≫

この報告は、術後翌周期胚移植、2周期後胚移植、3周期以上後胚移植に成績に差がないとしながらも3周期以上後胚移植は成績がやや低下するとResultsにも記載されています。
成績向上にはスクラッチングの影響などもあるのでしょうか。
子宮内膜スクラッチの影響は、スクラッチ同周期の胚移植は成績が低下するとされていますが、その後、血管新生を誘導する二次的な炎症(単球の導入)は着床に有益とされていて、着床促進効果は数ヵ月間持続する可能性があるとされています。

文責:川井清考(院長)

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