胚移植前黄体補充時プロゲステロン値の予測因子(Reprod Biomed Online. 2020)

ホルモン補充周期下凍結融解胚移植を実施する際の、胚移植時血中プロゲステロン値が低いと、患者様共々少し気持ちが落ち込みますよね。事前に胚移植時血中プロゲステロン値に影響を与える因子がわかっていれば対処法も検討することが可能です。胚移植前黄体補充時プロゲステロン値の予測因子を超したスペインからの報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

胚移植前黄体補充時プロゲステロン値の予測因子として、女性年齢と正の相関、体重、採血時間、低プロゲステロン既往とは負の相関がありそうです。

Iñaki González-Foruria, et al.  Reprod Biomed Online. 2020 Jun;40(6):797-804.  doi: 10.1016/j.rbmo.2020.03.001.

≪論文紹介≫

2016年3月から2018年2月にホルモン補充周期下凍結融解胚移植685周期(女性年齢45歳未満の自己卵子)を対象に胚移植前日の血中プロゲステロン(P4)値と生殖医療結果を調査したレトロスペクティブ・コホート研究です。多変量ロジスティック回帰を用いて、生児出生率に影響を与える決定因子を分析しました。血清プロゲステロン濃度に影響を与える独立した因子を評価するために、単変量解析と多変量線形回帰を使用した。プロゲステロン腟剤200mgは8時、16時、24時に挿入、採血時間は8時から19時としています。
結果:
患者背景として女性年齢 36.99±4.06歳、体重 61.86±11.02kg、胚移植前血中P4値 11.15±4.57ng/ml、胚移植前血中E2値 203.08±94.88pg/ml、エストロゲン投与日数 18.2±1.43日でした。
年齢(OR 0.93;95%CI 0.89-0.96)、エストラジオール投与期間(OR 0.96;95%CI 0.92-0.99)、血中P4値(OR 1.04;95% CI 1.01-1.08 )、着床前検査(OR 2.17;95% CI 1.55-3.03 )は生児出生率と独立して関連していました。単変量解析の結果、血中P4値の決定因子は、女性年齢、体重、血中P4値<10ng/mlの凍結融解胚移植既往、採血時間でした。多変量線形回帰の結果、女性年齢があがると血中P4値が上昇しました(β = 0.11; 95% CI 0.01-0.20).逆に、血中P4値<10ng/mlの凍結融解胚移植既往(β = -3.13; 95% CI -4.45 to -1.81])、体重が増加(β = -0.05; 95% CI -0.08 to -0.01) 採血時間(β = -0.13; 95% CI -0.25 to -0.01 )については血中P4値と負の相関が認めました。

≪私見≫

過去にプロゲステロン筋肉注射がBMIに影響するという論文をブログでも取り上げました。プロゲステロン腟剤でも同様の傾向がありそうですね。
プロゲステロン膣剤と筋肉注射 BMIによって胚移植成績変わる?(論文紹介)

文責:川井清考(院長)

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