プラバスタチンの妊娠高血圧予防効果(Am J Obstet Gynecol. 2021)

プラバスタチンはPE(preeclampsia:妊娠高血圧腎症)に関連する妊娠特有血管新生の不均衡を修正し、内皮細胞をリカバーし、酸化ストレス・炎症による損傷を防ぐとされています。
Maged M Costantineらが10年以上かけてFDAに掛け合い行ってきた臨床試験が現在もまだ続いています。がハイリスク妊娠患者を対象にプラバスタチン10mgとプラセボを用いたRCTでも有用性をしめしていて、今回ラバスタチン20mgとプラセボを用いたRCTを新たに行っています。こちらをご紹介いたします。
Costantine MM, et al. Am J Obstet Gynecol. 2016;214(6):720 e721–720 e717.
Costantine MM, et al. Obstet Gynecol. 2013;121(2 Pt 1):349–353.

≪ポイント≫

重篤なPE(preeclampsia:妊娠高血圧腎症)既往の女性にはプラバスタチンの有用性が期待される。ただし、国内では適応外使用であるため、使用の是非については慎重に取り扱う必要があると考えられる。

≪論文紹介≫

Maged M Costantine, et al.  Am J Obstet Gynecol. 2021 Dec;225(6):666.e1-666.e15. doi: 10.1016/j.ajog.2021.05.018.

プラバスタチンの安全性と薬物動態パラメータを評価する目的で、以前妊娠34週までにPE(preeclampsia:妊娠高血圧腎症)のために出産が必要であった妊娠女性を対象にプラバスタチン20mgとプラセボ群を比較した多施設共同盲検プラセボ対照無作為化パイロット試験です。妊娠12週0日から16週6日の女性に対して、プラバスタチン20mg/日またはプラセボを出産日まで経口投与する群に割り付けました。同時に、プラバスタチン薬物動態試験が妊娠第2期と第3期、および産後4~6カ月に実施しました。主要評価項目は、妊娠中の母体・胎児の安全性およびプラバスタチンの薬物動態パラメータとしました。
結果:
プラバスタチン投与群10名、プラセボ投与群10名を実施しています。有害事象、先天性異常、母体および臍帯血の肝機能、脂質、CK、 血管新生因子(PlGF)および抗血管新生因子(sFlt-1)ステロイドホルモン(TSH, FSH, LH, estradiol, total testosterone)の発現率には2群間で大きな差は認めませんでした。副作用は頭痛が最も多く、次いで胸焼け、筋骨格痛でした。妊娠中のプラバスタチン薬物動態パラメータでは、出産時の臍帯および母体サンプルの大部分において、プラバスタチン濃度はアッセイの定量限界以下でした。妊娠および新生児の転帰は、プラバスタチン投与群でより良好でした。新生児異常もプラバスタチン群ではみとめていません。平均最高濃度およびROCは、プラバスタチン1日10 mg投与に比べ、1日20 mg投与では2倍以上高かったが、見かけの経口クリアランス、半減期、最高濃度到達までの時間は同程度であり、以前に報告された非妊娠者におけるプラバスタチンの線形、用量非依存型薬物動態と一致しました。

≪私見≫

特定臨床研究法が制定されてから、なかなか適応外使用の薬剤を用いた臨床研究は難しくなりました。今後、学会をあげて国内でも取り組んで欲しい薬剤介入のひとつと考えています。

文責:川井清考(院長)

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