妊娠周期抗生剤使用は妊娠に有利・不利?(Hum Reprod. 2021)
特定の抗生物質と適応症は、妊娠しやすさと関連する可能性があります。病歴、健康状態、炎症状態、子宮内フローラなどが、影響を与えている可能性があります。アメリカからの報告です。抗生剤を使用した部位別のデータもありますのでご提示させていただきます。
≪ポイント≫
妊娠前の抗生物質使用は、全体として妊娠しやすさと関連がありませんでした。ただし、若い女性、喫煙者、生殖器感染症は妊娠しやすさの低下と関連している可能性が示唆されています。
≪論文紹介≫
Holly Michelle Crowe, et al. Hum Reprod. 2021 Sep 18;36(10):2761-2768. doi: 10.1093/humrep/deab173.
2013年6月から2020年9月に米国とカナダに居住する21~45歳の女性妊活希望者9524人(妊活期間6ヶ月以下対象)を対象としたインターネットベースの妊娠前コホート研究のデータです。最大12カ月間または妊娠報告まで2カ月ごとのフォローアップアンケートを行いました。
初回、フォローアップ問診票にて過去4週間の抗生物質使用を評価しました。抗生物質(ペニシリン、マクロライド、ニトロフラントイン、ニトロイミダゾール、セファロスポリン、スルホンアミド、キノロン、テトラサイクリン、リンコサミド)に基づき分類され、適応(呼吸器、尿路、皮膚、膣、骨盤、外科)により分類されました。
結果:
初回、もしくはフォローアップにて過去4週間に抗生物質使用を行った女性は、抗生物質を使用しなかった女性と妊娠しやすさは変わりませんでした(FR: 0.98, 95% CI: 0.89-1.07).スルホンアミド系とリンコサミド系は、妊娠しやすさの軽度上昇と関連し(FR:1.39、95%CI:0.90-2.15、FR:1.58 95%CI:0.96-2.60) 、マクロライドは軽度低下と関連していました(FR:0.70、95%CI:0.47-1.04) 。
抗生剤を使用した感染症部位別による妊娠しやすさの関係
周期数 |
妊娠数 |
調整前FR(95%CI) |
調整後FR(95%CI) |
|
抗生剤なし |
23,053 |
3,621 |
Reference |
Reference |
呼吸器系 |
713 |
102 |
0.93 (0.77–1.12) |
1.02 (0.85–1.23) |
尿路系 |
532 |
84 |
0.98 (0.79–1.22) |
0.99 (0.80–1.23) |
皮膚系 |
163 |
29 |
1.14 (0.82–1.58) |
1.09 (0.79–1.51) |
膣系 |
155 |
21 |
0.88 (0.57–1.36) |
0.89 (0.58–1.37) |
骨盤系 |
121 |
13 |
0.63 (0.35–1.11) |
0.71 (0.40–1.27) |
外科系 |
98 |
12 |
0.88 (0.49–1.58) |
0.89 (0.49–1.63) |
女性年齢、教育、収入、BMI、マルチビタミンの使用、PSSスコア(Perceived Stress Scale)、MDIスコア(Major Depression Inventory)、性交頻度、地理、現在の喫煙状況、性感染症既往により調整されています。
ベースライン時の年齢、教育、収入、BMI、マルチビタミンの使用、PSSスコア、MDIスコア、妊娠の可能性を高めるために何かをする、性交頻度、地理的地域、現在の喫煙、STI歴で調整したモデルです。
≪私見≫
亀田感染症ガイドラインの男性・女性尿路骨盤感染症もご活用ください。
文責:川井清考(院長)
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