ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素は妊活に有効?(Fertil Steril. 2023)
マルチビタミンが妊活に有効だとされた報告は1990年後半に報告されています(A.E. Czeizel, et al. Int J Vitam Nutr Res, 1996)。従来あるマルチビタミンに追加する形でミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素を加えたら妊娠までの期間が短縮するかどうか調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
標準的なマルチビタミンと比較して、ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリメントを併用することが自然妊娠までの期間には大きな影響を与えないことがわかりました。ただし、過体重の女性については、妊娠までの期間が短くなる可能性がありますが、肥満の女性では今回の解析では妊娠までの期間が長くなりました。
≪論文紹介≫
Shiao-Yng Chan, et al. Fertil Steril. 2023 Feb 6;S0015-0282(23)00128-0. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.01.047.
この研究は、ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素を含む栄養補助食品が、自然妊娠までの期間と臨床妊娠率に与える影響を調べるための二重盲検ランダム化比較試験(NiPPeR研究)の二次解析です。参加者は、妊娠を計画している18歳から38歳の女性で、糖尿病の方、不妊治療を受けている方を除きました。介入グループは、標準的なサプリメントに加えて、ミオイノシトール、プロバイオティクス、その他の微量栄養素を含みました。主なアウトカム評価項目は、無作為化から臨床妊娠の自然妊娠推定日までの日数、および3、6、12ヶ月後の累積妊娠率でした。研究は、イギリス、シンガポール、ニュージーランドで実施されました。
結果:
無作為化された1,729人の女性のうち、83%の1,437人(介入群736名、対照群701名)がデータを提供しました。妊娠のKaplan-Meier曲線は介入群と対照群で類似していました。20%が自然妊娠を達成した時期は、介入群では90.5日(95%CI:80.7〜103.5日)だったのに対し、対照群では92.0日(76.0〜105.1日でした。累積妊娠率を地位、民族、年齢、BMIなど調整したHRは、3、6、12カ月で同様でした。全体的な妊娠までの時間は、妊娠前BMIが高いほど長くなり、白人女性よりも非白人女性で長くなりました。過体重女性では、介入により、民族関係なく、対照群と比較して妊娠までの時間が短縮され(12ヵ月HR=1.47 [1.07〜2.02], P=.016; 20%妊娠 84.5日 vs. 117.0 日)、正常体重女性の 82.1 日と同等の結果に補正されました。一方、肥満女性では、介入により妊娠までの期間が対照と比較して長くなり(12ヶ月HR=0.69 [0.47〜 1.00]; P=.053; 20% 132.7 vs 108.5 dayで妊娠)、この結果は非白人の肥満女性に顕著に現れました。
BMIの定義ですが、アジア人では過体重 BMI 23-27.5、肥満 BMI 27.5-、非アジア人では過体重 BMI 25-30、肥満 BMI 30-としています。標準サプリメントは葉酸(400μg/d)、鉄(12mg/d)、カルシウム(150mg/d)、ヨウ素(150μg/d)、β-カロテン(720μg/d)、介入群ではミオイノシトール(4g/d)、ビタミンD(10μg/d)、リボフラビン(1.8mg/d)、ビタミンB6(2.6mg/d)、ビタミンB12(5.2μg/d)、亜鉛(10mg/d)およびプロバイオティクスが含まれています。
≪私見≫
過体重の女性にはミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリメントを併用が効果的、肥満女性には非効果的であることは不思議な結果ですね。
ミオイノシトール、プロバイオティクス、微量栄養素サプリメントを併用程度では肥満女性の体内環境が整えられないとディスカッションではかかれていますが、個人的には、医療行動経済学的観点、Biopsychosocial lensを含めて考えなくてはいけない結果だと感じています。過体重の方には妊活に対しての積極的な介入が有効そうです。
文責:川井清考(院長)
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