排卵期にプロゲステロン投与をしても排卵がおきる(J Assist Reprod Genet. 2023)
プロゲステロンをゴナドトロピンサージのトリガーとして使用することで排卵や黄体形成が起こるかどうかを示した症例報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
排卵間際ではプロゲステロン5-10mgの投与では排卵が誘発される、もしくは止まらないことがわかりました。
≪論文紹介≫
Lina Villar, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Feb 20. doi: 10.1007/s10815-023-02750-x.
発育卵胞がトリガーを通常実施する大きさに達した段階でプロゲステロン5-10mgを筋肉内投与したところ、約48時間後に排卵が超音波で確認でき、妊娠したというだけの報告です。一症例目では17時間後にLHサージを確認、二症例目では24時間後にLHサージを確認しています。
ブログでとりあげた理由
現在、排卵を誘発するトリガーにはhCG製剤やGnRHアゴニスト製剤が一般的に用いられています。そのほかにも、GnRHシグナル伝達経路の強力なセカンドメッセンジャーであるキスペプチンの臨床試験が進められていますが一般臨床応用される時期は不透明です。この症例報告は一度、読んだ後に、①排卵を誘発したのか、②排卵が止まらず自然に排卵が起きただけなのか、わからないなと感じていたのでブログで取り扱うことを見送った経緯があります。
個人的な備忘録としても含めてブログに上げておこうと思った理由は、プロゲステロンを排卵時期に投与しても排卵が止まらない可能性が高いという事実です。
最近、凍結融解胚移植のHDPリスクとして黄体の有無が注目されています。
ただ、胚移植日が限られている生殖医療施設では排卵周期での凍結融解胚移植が実施できないことも少なくありません。排卵間際の卵胞発育を起こっていれば、その段階から黄体補充を行なっても黄体形成がされる可能性が高いと判断できますので、胚移植日程には有効なのではないかと期待をしています。
文責:川井清考(院長)
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