プレコンセプションケアと介入ポイント(FS2022)
プレコンセプションケアの総説がFSに掲載されました。不妊治療の前にも後ろにもプレコンセプションケアは必須だと最近感じていますので、総説で気になるところをピックアップしたいと思います。
プレコンセプションへの介入をヘルスケア領域で広く行うことで、妊娠を計画している人、現在計画していない人の両方に女性だけではなく男性も含めて行うことが可能となります。「今後12ヵ月以内に妊娠したいですか」という質問が妊活を始める前のプレコンセプションには良いフレーズになるのかもしれません。また、ケアの対象を男性パートナーは当然のこととして、LGBTQ+の方々への対応、妊娠を計画していない方々に対しては意図しない妊娠を避ける情報提供や妊娠希望していなくても行っておいた方がよい健康チェックなどを検討する必要があります。また妊娠前の遺伝子検査などをどこまで行うかなどが新しい課題となってきています。
Teresa Harper, et al. Fertil Steril. 2022 Dec 11;S0015-0282(22)02101-X. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.12.014.
プレコンセプションケアの歴史
妊娠を考えている人へのアドバイスは、古代のスパルタ人にまでさかのぼるようです。“ordered the maidens to exercise themselves with wrestling, running, throwing the quoit, and casting the dart, to the end that the fruit they conceived might, in strong and healthy bodies, take firmer root and find better growth .” (Louis J.M.,et al. Am J Obstet Gynecol. 2019)。そして1979年にアメリカ合衆国保健福祉省(HHS)がプレコンセプションケアを提案します。ACOGとAAPはMarch of Dimes Foundationと共同で「周産期医療に関するガイドライン」を発表、その後もHealthy People 2000や1995年にACOGよりプレコンセプションのみに焦点をあてた刊行誌がでるなど、産婦人科医だけではなく幅広い分野での推奨されはじめています。
プレコンセプションケアの現在の構成要素
- 現病歴や既往症の確認
-性感染症
-子宮頸がん検診
-糖尿病
糖尿病女性でもHbA1c 6.5未満にすることで先天性奇形・周産期合併症の軽減
-甲状腺疾患
-高血圧症
-SLEやMSなどの自己免疫疾患
-婦人科良性疾患(子宮筋腫、子宮内膜症、PCOS)
-がん既往
-その他の慢性疾患(歯周炎など) - 過去の妊娠における問題の再発リスクを低減
早産のプロゲステロン投与、PEのアスピリン投与など - 現在、服用中の薬やサプリメントに催奇形性があるかどうかの判断
- ワクチン接種評価(インフルエンザ、COVID-19、B型肝炎、風疹、水痘)。
- 遺伝性疾患/遺伝性疾患の家族歴確認
- メンタルヘルスの対応
-不安・うつ
-ストレス
-家庭内暴力などをふくめた外傷 - 生活習慣、行動、環境の評価
-食事
-運動
-適正体重BMI:18.5~24
-葉酸サプリメント妊娠3ヶ月前より推奨
-ヨウ素補給(地域別)日本国内は問題なさそう
-喫煙(能動的、受動的)
妊娠中は、胎児発育制限、前置胎盤、剥離、子宮外妊娠、早産と関連
-アルコール摂取量 アルコールは催奇形性物質
-ドラッグ使用
-有害物質の曝露
-職業性被爆
文責:川井清考(院長)
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