人工授精を行う上での留意点(ガイドライン婦人科外来編2020)

ガイドライン婦人科外来編2020が発刊されました。
「人工授精の留意点」について触れられています。患者さまにもこちらに沿って治療が行われています。Answerは5つ挙げられています。

  1. 排卵少し前から排卵直後までに行う。<推奨度B>
  2. 洗浄濃縮処理精子浮遊液を用いる。<推奨度B>
  3. 妊娠率向上のために、クロミフェンやゴナドトロピン製剤による排卵刺激を行う。<推奨度C>
  4. 人工授精施行でも妊娠に至らない場合には生殖補助医療を行う。<推奨度C>
  5. 有害事象として、出血、疼痛、感染があることを説明する。<推奨度B>

≪私見と当院の対応≫

ここらかは私の意見を加えながら1―5にたいして当院の対応と私の意見を記載させていただきます。

  1. 卵子の受精能力は排卵後約1日までで、精子の寿命は約1.4日と言われています。人工授精もタイミングも排卵に近いところで行うのが大事だと思います。どのように人工授精を行う日を決めているかですが、私たちは採血まで行って判断することは稀で、超音波での卵胞サイズと内膜の状態、尿中LH測定で決定することが大半です。尿中LH陽性後24-56時間(平均32時間)排卵をすると言われていますので、尿中LH陽性になったら同日もしくは翌日に人工授精を行います。卵胞がある一定の大きさになっていればHCG投与から36-40時間で排卵をすると言われているので、こちらも同様にHCG投与後同日もしくは翌日に人工授精を行います。
  2. 洗浄濃縮処理精子浮遊液を用いる理由として精子を濃縮する目的以外に病原体や精子以外の細胞成分の除去があります。最近様々な新しい精子調整の方法が出て来ていますので、今後の成績比較が楽しみです。
  3. 私たちもゴナドトロピン製剤を使うことがあまり多くありませんが、自然周期よりクロミフェンやレトロゾールを使う方が妊娠率が高い傾向にあります。ただ、軽度男性不妊には原因が精液なのであえて薬を使わず自然周期から開始します。また原因不明の不妊症にははじめから卵巣刺激を行うことが多いです。
  4. これまでの報告では6回を目安にされていて、状況によって柔軟に対応すべきとされています。私も3-6回での体外受精へのステップアップが無難なのではないかと思っています。
  5. 合併症は医療行為をする上では医療者側が伝える義務があると思っています。忙しい時に煩雑になってしまうことがありますので、しっかり説明していきたいと思います。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。