採卵後の未熟から成熟した卵子の生殖医療成績(レトロスペクティブコホート2023)

調節卵巣刺激を行うと様々な段階の発育卵胞に卵胞成熟のトリガーをかけ34-37時間後に採卵を行いますので、成熟・未熟卵が混在することが一般的です。
成熟卵に紛れて取れてきて数時間後に成熟した卵子(MI→MII卵子)の生殖医療成績を評価した論文がでてきましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

「採卵時成熟卵」に比べて「採卵時当日遅れて成熟した卵」の顕微授精での成績(正常受精率、胚発生、正常胚率)は低いが、正常胚となってしまえば胚移植あたりの生児獲得率に差は認めませんでした。

≪論文紹介≫

Jeong Hee Moon, et al.  Fertil Steril. 2022 Dec 22;S0015-0282(22)02125-2.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.12.033.

2016年4月から2020年12月に単一生殖医療施設学術施設において、採卵直後にMII卵子が1個以上あり、顕微授精前に裸化したところMI卵子であり6時間後の再評価でMIIに成熟した卵子「MI→MII卵子」が1個以上あった患者800人1,124周期を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究です。
評価項目は同周期内の「採卵時MII卵子」7,865個と「MI→MII卵子」2,369個について正常受精率、胚盤胞形成率を比較しました。単一倍体胚盤胞移植を受けた患者(n = 406)について臨床妊娠率、流産率、生児獲得率を比較しました。
結果:
「採卵時MII卵子」が「MI→MII卵子」より、正常受精率、胚盤胞形成率ともにより有意に高くなりました(正常受精率:75.9% vs. 56.1%、胚盤胞形成率:53.8% vs. 23.9%)。また、「採卵時MII卵子」由来胚盤胞が「MI→MII卵子」由来胚盤胞に比べて正常胚の割合が高くなりました(biopsyあたり:49.2% vs. 34.7%)。正常胚盤胞移植後の妊娠率、流産率、生児獲得率は2群間(「採卵時MII卵子」vs.「MI→MII卵子」)に差は認められませんでした。(妊娠率:65.7% vs. 74.1%、流産率:6.4% vs. 5.0%、生児獲得率:61.5% vs. 70.0%)。

≪私見≫

卵子の成熟では核と細胞質(ミトコンドリア、リボソームなどの配置、細胞骨格の整備など)の両方が重要です。「採卵時当日遅れて成熟した卵」の受精率の低下や胚発生不良は、細胞質の未熟が関係している可能性もあります。また偏光顕微鏡下で観察できる早期染色体凝縮サイン(スピンドル)が通常と同じように配置されてからの顕微授精かどうかは今回の研究では示されていません。
当院でも「MI→MII卵子」の顕微授精は行っていますが、同様の結果を感じています。

文責:川井清考(院長)

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