LGA児のリスク因子(論文紹介)
凍結融解胚移植ではLGA児発症率が上昇すると言われています。
アメリカでの凍結融解胚移植での推移、LGA児発症率を検証した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
凍結融解胚移植では人種・民族によってLGA児リスクが異なりました。そのほか、高BMI、経産経験がLGA発症リスクと繋がりました。培養環境の変化で徐々に胚移植でのLGA発症リスクが軽減する方向になっているようです。
≪論文紹介≫
米国疾病対策予防センターのNASSからART集積データ(不妊クリニックの98%が登録)の凍結融解胚移植を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究で主要評価項目は単胎LGA児としました。
結果:
2004~2018年に、凍結融解胚移植の割合は20%から74%に増加しましたが凍結融解胚移植の単胎出生児のLGAの割合は18%から12%に減少しました。2016~2018年の凍結融解胚移植関連単胎生産127,525件のサブ解析では、LGAと関連する患者因子は、高BMI(BMI 25.0~29. 9;aRR 1.31;95% CI 1.26-1.36;BMI 30.0-34.9;aRR 1.48;95% CI, 1.41-1.55;BMI >35 ;aRR 1.68;95% CI 1.59-1.77)および経産経験でした。低BMI(<18.5 vs. 18.5-24.9)、非ヒスパニックであるアジア人/ネイティブハワイ人/太平洋諸島民、非ヒスパニックである黒人、ヒスパニックは白人に比べてLGA児リスクが低くなりました。
≪私見≫
この報告では他にも興味深いデータがでてきています。
新鮮胚移植後のLGA単胎率もこの期間に11%から9%に減少しています。
胚盤胞期でのガラス化(2011年)、ベンチトップインキュベーターの使用(2012年)、シングルステップ胚培養液(2013年)など体外受精の胚培養環境が変わった各地点でLGA児率は減少しています。今後、環境がますます改善することによりLGA児はより減るかもしれません。
また、凍結融解胚移植後の男児ではLGA児リスクがわずかに増加しました(aRR、1.04;95%CI、1.02-1.07)。過去の報告でも、体外受精や自然妊娠にかかわらず男児が女児よりLGA児になりやすいという報告と一致しています。(Norris T., et al.Arch Dis Child Fetal Neonatal. 2018, Alberico S.,et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2014; 14: 23)
文責:川井清考(院長)
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