レトロゾール周期人工授精では排卵期E2濃度は出生率に影響する?(論文紹介)

アロマターゼ阻害剤を用いたマウス研究、小児および青年におけるヒト先天性アロマターゼ欠損症のまれな症例報告から卵胞発育、排卵には必ずE2(エストラジオール)が必要でないことがわかっています。しかし、E2が低くなると、子宮内膜への影響、子宮収縮への影響、卵管機能への影響、卵胞発育と排卵、質への影響が否定できません。レトロゾール周期人工授精にて排卵期付近の血清エストラジオール(E2)濃度が生児獲得率と関係するかを調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

レトロゾール周期人工授精精において、25%、50%、75%の四分位でE2濃度が高い女性の方が出生率と臨床妊娠率が高くなりました。卵胞径が20mmを超えるとE2濃度が高くなるにもかかわらず妊娠率には影響しないことより、レトロゾール周期においてE2濃度が卵胞径と異なる出生率予測因子である可能性が高そうです。

≪論文紹介≫

Erika P New, et al. Fertil Steril. 2023 Jan 9;S0015-0282(23)00006-7. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.01.003.

2014年1月から2019年7月にレトロゾール周期人工授精2,368周期と対象とした多施設レトロスペクティブコホート研究です。主要評価項目は、女性年齢、BMI、最大卵胞径、14mm以上の卵胞数を調整した上でのhCG投与時またはLHサージ時の血清E2濃度と出生率の関係とし、副次評価項目として臨床妊娠率、流産率を比較検討しています。
結果:
25th(E2 110 pg/ml)、50th(157 pg/ml)、75th(225 pg/ml)、90th(319 pg/ml)のパーセンタイルで評価しました。生児獲得率は、E2が低いコホートでは9.4%-11.1%、E2が高いコホートでは12.5%-13.5%でした。生児獲得率は90thを除くすべてのパーセンタイル比較において、E2濃度が高い女性のコホートで有意に高くなりました。平均卵胞径>20mmまたは<20mmは、卵胞が大きい群では平均E2濃度が有意に高いにも関わらず、生児獲得率または臨床妊娠率と関連しませんでした。

≪私見≫

この報告はレトロゾールの用量が様々(2.5mg-10mg/day 5日間)です。
過去の報告で、レトロゾール用量2.5mg、5mg、7.5mg/dayで妊娠率や流産率に差がない報告(Badawy A, et al. Reprod Biomed Online. 2007)はありますが、適正な利用が必要そうですね。人工授精の卵巣刺激も一辺倒ではなく、治療戦略を立てていくべきなのかもしれません。

文責:川井清考(院長)

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