人工授精周期においてAMHと子宮内膜厚は関連する?(論文紹介)
ゴナドトロピン+人工授精周期においてAMHと排卵期子宮内膜厚との関連性を調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
PCOS患者を調整しても、ゴナドトロピン+人工授精周期において子宮内膜の発達は血清AMHと関係がありそうです。今回の検討ではトリガー日、前日の子宮内膜厚は妊娠率を予測する因子とはなりませんでした。
≪論文紹介≫
Stylianos Vagios, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Feb 6. doi: 10.1007/s10815-023-02736-9.
964名1,926周期ゴナドトロピン+人工授精周期を対象としたレトロスペクティブなコホート研究です。主要評価項目はhCGトリガー当日および前日の子宮内膜厚とAMHの関連とし、副次評価項目をAMHと子宮内膜厚を組み合わせたモデルの妊娠転帰への影響としました。
結果:
hCGトリガー日に内膜測定周期が52.8%、前日周期が47.2%でした。調整前の回帰モデルでは、AMHはhCGトリガー日の子宮内膜厚と弱い相関がありました[bAMH (95%CI) = 0.032 (- 0.008, 0.070), p = 0.015]。潜在的な交絡因子(BMI、経産回数、血清E2濃度)で調整すると、正の相関となりました [0.051 (0.006, 0.102), p = 0.047]。同様の所見は、hCGトリガー前日の子宮内膜厚とAMHでも認めました。子宮内膜厚は、年齢・AMH・BMI・血清E2濃度を調整した原因不明不妊カップルに限定した場合を除き、臨床妊娠を関連しませんでした。[OR(95%CI)=0.787(0.623, 0.993), p=0.044]。
≪私見≫
この論文は、ゴナドトロピン+人工授精周期としていますが、患者背景をみると、ほとんど発育卵胞数は1-2個ですので、通常の人工授精周期と同じように理解しても良い気がします。PCOS患者が11%であり、ほとんどがnon PCOS患者での評価となっています。下記の表は平均値のカッコ内はSD、中央値のカッコ内はIQRで記載されています。
平均値 | 中央値 | |
女性年齢 | 36.1 (4.0) | 36.0 (33.0–38.8) |
AMH | 3.3 (4.0) | 3.3 (4.0) |
BMI | 25.1 (5.0) | 24.0 (21.3–27.5) |
子宮内膜厚(トリガー前日) | 8.4 (2.2) | 8.0 (7.0–9.0) |
子宮内膜厚(トリガー日) | 9.1 (2.3) | 9.0 (7.5–10.3) |
13 mm以上の卵胞数 | 1.7 (0.9) | 2.0 (1.0–2.0) |
E2濃度(トリガー前日) | 322.7 (187.7) | 276.0 (183.5–418.5) |
E2濃度(トリガー日) | 443.4 (270.9) | 372.0 (573.8) |
トリガー月経周期 | 11.7 (4.4) | 11.0 (9.0–13.0) |
文責:川井清考(院長)
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