動画で見る受精現象の不思議(cone出現)

タイムラプスインキュベーターの登場により、今まで見ることが出来なかった現象を動画で見ることが出来るようになりました。今回はその現象の中の一つであるcone出現を紹介します。

coneとは卵子に精子が入った部位にできる一過性細胞質隆起のことを言います。簡単に言うと、精子が卵子の中に入った場所が一時的にプクッと盛り上がります。これは蚊に刺された皮膚がプクッと膨らむのと似ています。

動画は精子が卵子の中に入ってから、受精反応を示す(卵子の中に男女の遺伝情報が入った袋が2個見える)までの様子を示しています。受精反応を示す前(動画が始まった直後)に矢印の先、卵子表面がプクッと膨らむ様子が確認できます。

動画は全部で22秒です。動画開始から2-6秒の間に矢印の先の卵子表面がプクッと膨らむ様子が確認できます。「あ、ここから精子が入ったんだ!」ということが分かります。その後、卵子内部に男女の遺伝情報が入った2個の袋が見えてきます。
このcone出現は全ての卵子で見られる訳ではなく、毎日卵子を見ている我々培養士でもお目にかかるのは約半年に一回程度と極めて稀です。なので、cone出現を見ることが出来たときは培養士同士でも「お~!」という感じになります。

この現象、1980年にウニの卵、1988年にヒトでの卵で確認されたもので、人間の卵では2008年に初めて確認されました。人間では全ての卵で起こることが見られないcone出現ですが、cone出現が見られない卵でも順調に育つため、必ずしも発育に必要なわけではないとされています。

今回は我々培養士でも中々お目にかかれないcone出現を動画で紹介しました。

引用文献
Fertilization cone formation in starfish oocytes: the role of the egg cortex actin microfilaments in sperm incorporation. Kyozuka K, Osanai K. Gamete Res. 1988 Jul;20(3):275-85. doi: 10.1002/mrd.1120200304.

Actin, microvilli, and the fertilization cone of sea urchin eggs. Tilney LG, Jaffe LA.J Cell Biol. 1980 Dec;87(3 Pt 1):771-82. doi: 10.1083/jcb.87.3.771.

Time-lapse cinematography of dynamic changes occurring during in vitro development of human embryos. Mio Y, Maeda K. Am J Obstet Gynecol. 2008 Dec;199(6):660.e1-5. doi: 10.1016/j.ajog.2008.07.023.

文責:平岡謙一郎(培養室長)

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