子宮内膜症女性はガン以外の慢性疾患との関連はありそう?(論文紹介)

子宮内膜症はヨーロッパ生殖医学会のガイドライン2022でも癌との関連は記載されてきましたが、そのほかの慢性疾患との関連も数多く報告されています。
子宮内膜症ガイドライン(ESHRE2022:癌との関係) フィンランドの出生コホートを用いた子宮内膜症と50歳までの慢性疾患の関連を示した前向きコホート研究が報告されましたのでご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

子宮内膜症の女性は、子宮内膜症でない女性と比較して、いくつかの慢性疾患のリスクが高いことがわかりました。片頭痛、筋骨格系疾患、気分障害、免疫および呼吸器疾患、疼痛、非特異的症状および徴候、ならびに臨床および検査所見の異常がより頻繁に見られました。子宮内膜症の(腹膜、卵巣、深部内膜症)の違いによる併存疾患の蓄積プロファイルの違いは認められませんでした。

≪論文紹介≫

Rossi Henna-Riikka, et al. Fertil Steril. 2022 Dec 7;S0015-0282(22)01782-4. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.09.361.

北フィンランド地域の1966年の全出生予定者の96.3%(母数12,055人、生児数12,058人、うち女児5,889人)から成る人口コホートを用いた前向きコホート研究で、もともと、長期的な健康状態や労働能力を評価するために設計されたもので、データ収集ポイントは出生時、1歳、14歳、31歳、46歳としています。今回の研究では、カルテと46歳児の自己申告アンケートから、子宮内膜症と併存疾患との関連を、いくつかの共変数を含むロジスティック回帰モデルを用いて評価しました。
結果
子宮内膜症のある女性は、子宮内膜症のない女性に比べて、病院で婦人科疾患以外の診断を受ける割合が約2倍高くなりました(aOR, 2.32;95%CI, 1.07-5.02)。アレルギー、感染症、痛みを引き起こす疾患、および呼吸器疾患と関連していました。さらに、子宮内膜症のある女性は非特異的な症状(aOR 3.56; 95% CI, 2.73-4.64)、特に腹痛や骨盤痛(aOR 4.33; 95% CI, 3.13-4.76)の割合が高くなりました。時間的分析により、子宮内膜症のある女性では、子宮内膜症がない女性より若い年齢で様々な診断が蓄積されていることが明らかになりました。
子宮内膜症の(腹膜、卵巣、深部内膜症)の違いによる併存疾患の蓄積プロファイルの違いは認められませんでした。

≪私見≫

過去にも子宮内膜症とさまざまな疾病の関連をしめした報告はなされています。
子宮内膜症の患者様のヘルスケアを管理するうえで、中長期的なケアが必要だと切に感じています。

  • 癌を含めた疾患との関連
    Kvaskoff M.Hum Reprod Update. 2015; 21: 500-516(Review)
    Teng S.W.,et al.J Chin Med Assoc. 2016; 79: 577-582(台湾)
    Choi E.J.,et al. Obstet Gynecol Sci. 2017; 60: 579-586(韓国)
    Parazzini F. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2017; 209: 3-7(Review)
  • 片頭痛の併存
    Ferrero S., et al. Hum Reprod. 2004; 19: 2927-2932
  • うつ病、不安、ストレス関連障害、アルコール/薬物依存、ADHDとの関連
    Gao M.,et al. Am J Obstet Gynecol. 2020; 223 (e1–e16): 415
  • SLE、シェーグレン症候群、関節リウマチ、多発性硬化症などの膠原病との関連
    Nielsen N.M.,et al. Hum Reprod. 2011; 26: 1555-1559
    Harris H.R.,et al. Ann Rheum Dis. 2016; 75: 1279-1284
  • アレルギー症状、喘息、アトピー性疾患との関連
    Ferrero S., et al. Hum Reprod. 2005; 20: 3514-3517
    Matalliotakis I., et al. J Obstet Gynaecol. 2012; 32: 291-293
    Bungum H.F., et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2014; 179: 209-215
  • 過敏性腸症候群との関連
    Saidi K., et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2020; 246: 99-105

文責:川井清考(院長)

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