妊活相談において不妊クリニックに求められるニーズ
ブライダルチェック/プレコンセプションケアにおいて、医療者から提供するものと患者の満足度との不一致は大きな課題だと感じています。
2022年度亀田IVFクリニックは新たな試みとして妊活希望する女性のためのプレコンセプション検診を開始して、プログラム作成に挑戦しています。今回はベルギー・オランダで妊活のためのプレコンセプションケアをうけた患者たちのニーズを取り上げてみたいと思います。
詳細なインタビュー(2015年-2017年)を22名の対象者(ベルギーまたはオランダの生殖医療施設で不妊症の診断後3~18ヶ月の妊活を経験した10組のカップルと2名の女性)に実施しました。対面式の詳細なインタビューにより、肯定的、否定的な経験や満たされていないニーズについて調査した報告をご紹介します。
●不妊治療クリニックにおける妊活プラン立てとフォローアップ体制の必要性
不妊症スクリーニングをしてもらうこと、妊活によるカップルの妊娠の可能性と今後の進め方を医療者と話し合うことが求められていました。妊娠しなかった後に再度相談できるフォローアップ体制の構築がされていることが望まれるようです。
●性交渉に関するアドバイスの必要性
5つのアドバイスに意見が集約されていました。なかなかここまで踏み込んだアドバイスは、不妊クリニックでは欠落している内容かもしれません。
- 妊活を意識することで性的快感の減少することはよくあることだと知らせてほしい。
- セックス後に足を上げるとか、逆立ちするとか、1時間動いちゃいけないとかの妊活神話に根拠がないことを知らせてほしい。普段通りにセックスできることが性的快感の減少につながらないことを理解してほしい。
- 妊娠しやすい期間や回数などの妊娠につながるアドバイスをしてほしい。セックス回数が多いほど妊娠しますよと言われても時には苦痛になっていることを理解してほしい。
- 妊娠するセックスにばかり焦点をあてて話すのでなく、性的快感をたもてるような体制のアドバイスをしてほしい。エロティックなアドバイスかどうかは別としてパートナーへの声の掛け方などでしょうか。
- 妊活にばかり焦点をあてて話すことは夫婦の関係に影響をあたえる恐れがあるため、夫婦共にアドバイスをもつことを望ましい。
●ライフスタイルやストレスマネジメントに関するアドバイスの必要性
妊娠の可能性を高めるために、ライフスタイルを自己管理する方法を重要視する傾向がありました。
●不妊治療クリニックスタッフとの交流の必要性
全てのカップルが不妊治療クリニックのスタッフとの交流を望んでいました。学歴や肩書きなどではなく、アドバイス経験と多職種ネットワークを評価する声が多くありました。ウェブカメラでの交流や対面での交流を重視するわけではなくメールベースで十分と考えているカップルが多くいました。
●仲間の経験について情報を得る必要性
不妊に悩むカップルの共通体験を知ることで、孤独感が軽減されるとの意見がありました。成功事例や他のカップルの辛かった経験などを共有することがカップルにとってはありがたいことと感じる傾向にありました。そこに専門家の意見が簡単にはいっていることを評価するカップルもいました。
●両パートナーの妊活に関与する必要性
インタビューをすると、どちらかのパートナーが主体性をもって取り組む傾向にありましたが、両パートナーともに妊活に参加してもらう必要性を望んでいました。
Felicia Dreischor, et al. Hum Reprod Open. 2022 Sep 15;2022(4):hoac037. doi: 10.1093/hropen/hoac037.
プレンコンセプションケアを受け、自己妊活で妊娠を希望するカップルにおいては、検査を行い、結果を説明し、妊娠の可能性を説明するに留まらず、複数の観点からサポートできる体制を構築することが必要なんだと思います。
当院のプレコンセプション検診も、少しずつでも受診カップルが望む形に近づけていきたいと思います。
文責:川井清考(院長)
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