胚移植の推奨事項(ASRM2017)

胚移植手技に対して、米国生殖医学会の専門家委員会が推奨度をまとめたガイドラインをご紹介いたします。
Fertil Steril. 2017 Apr;107(4):882-896.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.01.025.

≪ポイント≫

胚移植時には超音波ガイド下が好ましいとされています。カテーテルは柔らかいものを使用し、移植前には子宮頸管粘液の除去をしてもよいかもしれません。
胚は子宮底部から10mm以上手前の中央に移植し、移植後は安静時間をとる必要はありません。
鎮痛剤、麻酔、マッサージ、鍼治療、漢方などの統合医療は移植成績を向上させる根拠はありません。また胚移植時には予防的抗生剤は必須ではなく、胚移植カテーテルの抜去までの時間は気にする必要はなさそうです。

推奨度A

  • 臨床妊娠率と生児獲得率を改善するために胚移植時には腹部超音波ガイド下を推奨する10件のRCTに基づく良いエビデンスがあります。
  • 胚移植には柔らかい胚移植カテーテルの使用を推奨する良い証拠があります。柔らかいカテーテル同士であれば特定の種類の推奨はありません。
  • 胚移植後には安静時間は必要ありません。

推奨度B

  • 胚移植時期の鍼灸治療は、胚移植の着床率を改善しません。
  • 経皮的電気刺激(TEAS)が胚移植成績を改善したというRCTがありますが、1本のみで正当な評価が難しいとされています。
  • アモキシシリンとクラブラン酸を胚移植の前日と当日に投与する予防的抗生物質は妊娠率を改善しないという RCTがあります。ルーチンの予防的抗生剤投与は推奨されていません。
  • 胚移植時に着用するグローブは胚移植成績に影響を与えません。
  • 頸管粘液を除去すると有益だという1件のRCTと1件の前向き研究があります。
  • 移植カテーテルを置く場所によって着床率・妊娠率に影響を与えるとする6件の研究(RCT2件、コホート研究4件)があります。
  • 子宮底部より10mm以上離れた部位に胚移植することにより妊娠率が最適化するという7件の研究(RCT3件、コホート研究4件)があります。
  • 胚移植後すぐに移植カテーテルを抜去するとよいというRCT1件とコホート研究1件があります。
  • 胚移植カテーテル上の粘液は除いてあげれば妊娠率・生児獲得率に影響を与えないとする7件のコホート研究があります。
  • 胚移植後にカテーテル内に胚が残っていた場合、すぐに移植してあげれば、着床率、臨床妊娠率、流産率に影響を与えないとする11件の研究(RCT1件、コホート研究9件、シリーズ研究1件)があります。

推奨度C

  • 胚移植時に麻酔・鎮痛薬を使用することが成績にどのように影響するかはエビデンスがありません。
  • 胚移植成績の改善目的でのルーチンでの麻酔は推奨されません。
  • 胚移植成績の改善目的でのマッサージ療法の推奨の是非のエビデンスはありません。
  • 胚移植成績の改善目的での漢方などの統合医療の推奨の是非のエビデンスはありません。
  • 胚移植時のカテーテルの位置に関して、詳細な推奨はありません。
  • 胚移植後のカテーテル先端の血液付着が着床率や妊娠率の低下と関連するかどうかはエビデンスが不十分とされています。
  • 胚移植時のカテーテルの特定の注入速度を推奨するエビデンスは不十分とされています。

文責:川井清考(院長)

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