妊娠前のビタミンD濃度は流産リスクと関連する?(論文紹介)

妊娠前のビタミンD濃度と流産リスクの関連は一定の見解がでていません。実は論文も3本ほどしかありません。
現在のところ、自己妊活での妊娠する力には影響しない、流産率は妊娠前ビタミンD濃度が低すぎなければ強くは影響しないというのが見解です。
ただし、流産を経験している女性、ビタミンDが非常に低い女性に関してはサプリメントなどでビタミンDを摂取することが望ましいと考えています。

●妊娠前ビタミンD濃度は流産率に影響しない報告 その1
白人女性153名(平均29歳: 25-35歳)を対象とした追跡調査。妊娠前25(OH)Dの中央値は59 nmol/l(23.6 ng/ml)であり、登録された女性のうち63%は6ヶ月以内に妊娠成立しました。女性の31%は25(OH)Dが50 nmol/l(20 ng/ml)未満であり、12%は80 nmol/l(32ng/ml)以上でした。25(OH)D は全体として妊娠率や流産率と関係しませんでしたが、妊娠10-22週に流産した女性3名は、流産しなかった女性と比較して、妊娠初期の25(OH)D が低くなっていました。(14ng/ml vs. 26ng/ml、P = 0.03)
Moller UK, et al. Eur J Clin Nutr 2012; 66:862–868. DOI: 10.1038/ejcn.2012.18

●妊娠前ビタミンD濃度は流産率に影響しない報告 その2
2008年から2015年の間に自然妊娠を試み、妊娠に至った362人の女性(33±3.0歳)を対象とした前向き研究。登録時に自然妊娠を試みてから3カ月以内であり、30~44歳の参加者を対象としています。妊娠前の月経中に血液サンプルを採取し、25-ヒドロキシビタミンDを測定しました。
平均25(OH)Dは、人種がアフリカ系アメリカ人、およびBMIが高い人ほど低い傾向がありました。女性年齢、人種、BMI、教育、運動、アルコールおよびカフェイン摂取量を調整した後、25(OH)D 30~40ng/mlである妊娠女性と比較して、25(OH)D値 <30ng/mlの妊娠女性の流産に対するハザード比(HR)・95%CIは1.10; 95%CI: 0.62 -1.91でした。
A Subramanian, et al. Hum Reprod, 2022. 37(10), 2465–2473. DOI: 10.1093/humrep/deac155

○妊娠前ビタミンD濃度は流産率に影響する報告
無作為化二重盲検プラセボ対照EAGeR試験による前向きコホートの二次解析。過去に1〜2回の流産経験がある18〜40歳の女性1191人を対象とし最大6周期観察しています。25(OH)Dは妊娠前と妊娠8週目に測定しました。
女性約半数の47%は十分な濃度(≧75nmol/L:30 ng/ml)でした。妊娠前25(OH)Dが十分な女性は、不十分な女性よりも臨床妊娠(aRR 1.10 ; 95%CI 1.01-1.20)および生児獲得(aRR 1.15 ; 95% CI 1.02-1.29)が高い傾向にありました。妊娠8週目25(OH)Dより妊娠前25(OH)Dが十分である方が流産リスク軽減と関連していました。妊娠前25(OH)Dは妊娠しやすさとの関連はありませんでした(aFOR 1.13; 95%CI 0.95-1.34)。
Mumford SL, et al. Lancet Diabetes Endocrinol 2018; 6:725–732. DOI: 10.1016/S2213-8587(18)30153-0

文責:川井清考(院長)

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