妊娠間隔は短すぎても長すぎても周産期リスク上昇?(論文紹介)

妊娠間隔が短くても長くても、低出生体重児、早産など周産期合併症のリスクが上昇すると言われています。妊娠間隔が短い(18ヶ月未満)の場合、母体の前回の妊娠からの生理的回復が不十分なため、周産期の有害な結果に影響を与える可能性があります。反対に、妊娠間隔が長い(59ヶ月以上)の場合、女性が年齢を重ねる分、高齢のための母体合併症が増加すると考えられています。適切な出産間隔を理解することで、周産期の有害な転帰を予防することができます。
不妊治療妊娠女性と不妊治療なし妊娠女性の妊娠間隔における周産期予後を検討した論文をご紹介いたします。

≪ポイント≫

不妊症女性も不妊治療なし女性と同様に、妊娠間隔を少なくとも12カ月以上24カ月未満にすることで、37週未満の早産や低出生体重児リスクを減らすことができます。

補足:
妊娠間隔の定義:前回の出産日から妊娠に至った月経初日
Interpregnancy interval is defined as the interval between the start of the index pregnancy (first day of the last menstrual period) and the preceding live birth delivery date.

≪論文紹介≫

Jaimin S Shah, et al. Fertil Steril. 2022 Sep;118(3):550-559.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.05.025. 

米国疾病対策予防センターの出生率データベースを用いたレトロスペクティブ・コホートです。2016年-2019年の体外受精妊娠(n=32,829)、排卵誘発・人工授精妊娠(n=23,016)、不妊治療なし妊娠(n=756,042)について、早産(37週未満)および低出生体重児(2,500g未満)を評価しました。
結果:
12~18ヶ月の妊娠間隔と比較して、12ヶ月未満の妊娠間隔は、排卵誘発・人工授精妊娠と不妊治療なし妊娠の早産(37週未満)増加と関連しました(それぞれaOR, 1.42;95%CI、1.16-1.74、aOR, 1.14;95%CI、1.13-1.15)、一方体外受精妊娠では妊娠間隔は早産率と関連しませんでした(aOR, 0.90;95%CI、0.77-1.04)。妊娠間隔が12ヶ月未満であることは、体外受精妊娠、排卵誘発・人工授精妊娠、不妊治療なし妊娠の低出生体重の増加と関連していました(それぞれ、aOR, 1.34; 95% CI, 1.09-1.64; aOR, 1.33; 95% CI, 1.01-1.76; および aOR, 1.26; 95% CI, 1.24-1.27 )。

≪私見≫

過去にM.M. Quinnらが2011年、2019年に不妊治療女性を対象に早産、低出生体重児を比較検討した傾向と同じ方向性となっています。
今回の報告では。妊娠間隔が12ヶ月未満と60-120ヶ月の場合、32週未満や28週未満の早産、1500g未満の極低出生体重児リスクが上昇することを報告しています。女性年齢別解析(35歳未満、35-37歳、38-40歳)では、同じような傾向がみられたので、女性年齢によって説明方針を変える必要はないかと考えます。

一般女性を対象とした妊娠間隔は、6ヶ月未満、12ヶ月未満、18ヶ月未満、60ヶ月以上、72ヶ月以上の場合、早産や低出生体重児リスクが増加するとされています。
A. Conde-Agudelo, et al. J Am Med Assoc, 295 (2006), pp. 1809-1823
B.P. Zhu, et al.N Engl J Med, 340 (1999), pp. 589-594
K.A. Ahrens, et al. Paediatr Perinat Epidemiol, 33 (2019), pp. O25-O47
L.E. Mignini, et al. BJOG, 123 (2016), pp. 730-737

文責:川井清考(院長)

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