勃起障害と不妊症の保険診療について②

Q. 勃起障害に対して、バイアグラ®️やシアリス®️は健康保険の適応ですか?
A. 条件があえば健康保険が使えます。一般不妊治療中のみです。

生殖医療ガイドラインのホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)についての記載(「PDE5阻害薬は、勃起障害を伴う男性不妊症に対して有効である。」)がもとになって、男性不妊症の患者さんでの勃起障害に対して、バイアグラ(シルデナフィルクエン酸塩)およびシアリス(タダラフィル)が2022年4月から保険収載となりました。バルデナフィル塩酸塩は収載されていません。ご存知の通り、これまで我が国で処方はみとめられていたものの勃起障害に対しては、自費診療での取り扱いでした。
ただし、保険診療での使用には厳密な条件があり、簡単に言うと不妊症の男性因子として、経験のある泌尿器科医師が診療し、ED診療ガイドラインに沿って勃起障害が診断され、そのために「一般不妊治療」をおこなっている場合のみ保険診療として処方が可能であり、そのほかの場合はひきつづき自費となります。
「一般不妊治療」についてですが、不妊症診療は、女性側の診療が中心となっていることを理解する必要があります(図)。我が国の保険診療としての生殖医療は女性側の治療を中心として組み立てられられており、タイミングや人工授精での治療である「一般不妊治療」と、「生殖補助医療」(採卵や体外受精、顕微授精、胚移植など)の2段階となっています。PDE5iは、一般不妊治療(主にタイミング)に用いられることになります。採卵した卵子を用いる「生殖補助医療」(体外受精)では、性交渉が不要なため、勃起障害があっても他の方法で精子が得られれば治療可能であるからです。たとえば、自慰にて射精ができ運動精子がえられれば体外受精は可能です。また、男性機能障害の一つである射精障害が重度であって射精不能な場合でも、精巣内精子採取術などの外科的な精子精手術で精子を得ることができれば、体外受精のひとつである卵細胞質内精子注入法(いわゆる顕微授精)での治療が可能です。

(リーフレット)不妊治療の保険適用(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/000913267.pdf)を加工して作成

参考文献

  • CQ38勃起障害を伴う男性不妊症に対し、ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬は有効か? 生殖医療ガイドライン、一般社団法人日本生殖医学会編、(株)杏林舎、東京、p141-142、2021年
    (http://www.jsrm.or.jp/publications/pub_guidelines.html)

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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