AIスコアリング(iDAScore®)と胚形態動態の関連(論文紹介)

iDAScore®️は妊娠継続を予測するAIスコアリングシステムで0-9.9の点数が表示されます。2022年8月現在、version1が提供されています。このAIシステムは世界各国の18のIVFセンター(2011年から2019年の間のレトロスペクティブデータ)から集めた115,832個の胚からなる大規模なデータセットに基づいて学習・評価され、そのうち14,644個(心拍陽性 4,337個、と心拍陰性 10,307個)の胚が着床した胚として解析しました。トレーニングデータセット(85%)とテストデータセット(15%)にわけて解析を行なっています。 当院でも採用をしていますが、実際AIスコアリングは何をみて評価しているのかわからないことが間違った胚を選択していないかどうか、現在まで培ってきた胚の評価法を照らし合わせて評価していくことが大事です。国内からiDAScoreの開発に画像データを提供した施設が別途おこなったiDAScoreと胚のmorphokineticsとの関係を評価した報告です。

≪ポイント≫

iDAScoreは胚の現在まで評価が行われてきた形態動態および形態学的変化(特に受精から胚盤胞発生の後半部分)と有意な関係があることがわかりました。

Kenji Ezoe, et al. Reprod Biomed Online. 2022.DOI: 10.1016/j.rbmo.2022.08.098
2019年10月から2020年12月に、クエン酸クロミフェンを用いたmild stimulationで拡張胚盤胞培養をおこなった925人の患者(女性平均年齢 38.3±0.1歳 1,503個胚盤胞、iDAScore平均値7.9±0.0 下位四分位、中央値、上位四分位はそれぞれ7.0、8.6、9.2)を対象としたAIベースのスコアリングシステムが胚のmorphokinetics(形態動態)とどのように関連しているか調査しました。
結果:
低スコア群では、細胞質Haloの期間が有意に延長し、雌雄の前核break downのタイミングは低スコア群で有意に遅延しました。異常分割胚(3分割)、異常分割胚(多胚分割)、急速な分割スピード胚(t2からt3までの間隔が5時間未満)、reverse cleavage胚、非対称分割胚は,正常分割胚に比べて低スコアでした。培養2日目および3日目の細胞数および胚盤胞のフラグメンテーション率はiDAScoreと有意に関連していました。低スコア群では、コンパクション、胚盤胞形成、拡大胚盤胞の遅延が観察されました。胚コンパクション時の別となっている割球があることは低リスク群に多くみられました。胚盤胞の形態はiDAScoreと有意に関連していました。重回帰分析により,胚盤胞期への移行期の形態動態、形態評価がiDAScoreと強く関連することがわかりました。

≪私見≫

iDAScoreを当院でも先進医療でタイムラプスを行っている患者様には提供しています。培養士がつけたグレードとiDAScoreの両方を吟味し移植胚を検討しています。この論文の強みは国内でのデータということなので、人種差などをあまり意識しなくて良い点です。弱みとしては、この施設はiDAScoreのテストケースにも数多くの胚画像を提供していましたので、iDAScoreの学習過程での特徴は、このクリニックの評価項目を強く反映している可能性も拭い去れない点です。論文は客観的データを示すResultと客観的データを推測するDiscussionに分かれます。このあたりを理解し論文を読むようになると、一つの論文からたくさんの臨床につながる学びが得られると考えています。

文責:川井清考(院長)

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